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2011年 初夏の旅 (1) 札幌~東京へ  [日本の旅(東京)]

6/15(水) 千歳10:00→羽田11:30   三井ガーデンホテル銀座プレミア 3泊

梅雨の季節に上京するのは私だけではなく、北海道に住む人にとってはビジネスや所用以外では、当然避けたい時期なのです。暑い上にじめじめしたあの湿気は学生時代から5年ほど在京経験がありますが、道産子の私にとってかなり辛いものでした。なのに、この時期に上京しなければならないのは・・・そう、オペラがあるからなのです。

初めてオペラの生舞台に接したのは忘れもしない1996年の6月METの日本公演でした。その後はNYに行くことが多かったので、本場で観られるのだからと自粛していました。それで、今回でまだ3回目のMET日本公演です。

豪華なキャストに目がくらんで、高額のチケットをゲットしたのが、昨年秋でした。まさかの3.11の震災と原発事故が起きたことで、公演が成り立たないのではと心配しましたが、このようなときこそオペラの音楽を舞台を届けたいというMETの熱意が稔った形になりました。主なキャストではカウフマンやネトレプコがキャンセル。ネトレプコのミミはNYで観てますし、「ボエーム」のチケットは手配していませんでしたので、被害はなかったのですが、問題は「ドンカルロ」です。カウフマンのファンとしては、残念の一語に尽きます。カウフマンのドン・カルロは2年前にROH(ロンドンのロイヤル・オペラハウス)で聴いてはいたのですが、この機会に再度聴きたいものと欲張っていました。

ということで、偶然同じ飛行機になった友人のE子さんと東京へ。ところがE子さんはうっかり果物ナイフを手荷物に入れてしまって、それをいったん預け、到着後受け取ることになりました。時間がかかるようなので、一刻でも早くホテルに入り休みたい私を優しいE子さんは察してくれて、空港でお別れになりました。モノレールで浜松町、そしてタクシーでホテルへ(約700~800円)。

お部屋の準備が出来るまで、ホテル内のレストランでブッフェランチ。前菜とデザートが食べ放題でパスタを選ぶスタイル(2500円)。シャンパンベースのミモザをいただいて部屋に入り、気持ちよく仮眠できました。

NHKホールのある渋谷までは今までは新橋からJR山手線を利用していましたが、今回はi phoneの経路検索に従って、地下鉄銀座線で行ってみました。i phone2を使い始めて3年もなるのに、初めてこのMAP経路検索を利用しました。今さらと笑われそうで、ホントは内緒にしたかったのですが・・・(汗)

途中でBさんご夫妻に遭遇して、ラッキーでした。お願いしてあった夏の予習用の資料を貸していただきました。明日はブリュッセルに出発するというご主人、そしてご主人が戻られる5日後にブリュッセルに2泊の強行軍で行かれるというBさんに驚愕・・・心強いミンコ応援団のお二人です。

ヴェルディ『ドン・カルロ』 18:00開演

指揮:ファビオ・ルイジ  演出:ジョン・デクスター

フィリッポ2世:ルネ・パーペ(B)   ドン・カルロ:ヨンフン・リー(T)   エリザベッタ:マリーナ・ポプラフスカヤ(S)    エボリ公女:エカテリーナ・グバノヴァ(Ms)    ロドリーゴ:ディミトリ・ホロストフスキー(Br)    宗教裁判長:ステファン・コーツァン(B)   テバルド:レイラ・クレア(S)

[演奏]メトロポリタン歌劇場管弦楽団 [合唱]メトロポリタン歌劇場合唱団

席は1階左側後方。あまり良い席ではありませんが端なので、体を少し通路のほうにずらしながら観ました。前のほうにも空席が目立ちましたが、移動を監視するかのような係員の視線が厳しく結局は最後までこのまま・・・。

指揮は大好きなルイジでした。2008年の素晴らしかったドレスデンでの『リゴレット』を彷彿とさせるかのような豊かな旋律、時にはうねるような激しい演奏で、ドラマティックなヴェルディを堪能できました。ドンカルロは生はこれで5回目です。オペラ放浪の沖縄のおじさんが同じ演目を5回観ないと駄目だと言っていたのを思い出しました。映像も何回か観ていますから、ある程度は分かったつもりでしたが、今回は「そうだったのか~」と遅ればせながら感じとることも少なからずあり、ますます「ドン・カルロ」が好きになりました。

舞台はMETライブヴューイングやROHでのものより、METらしくオーソドックス。衣装なども豪華ですが、古臭さを感じました。この演出は日本が最後になるのかもしれませんね。

7%20Japan%202011_06_02-289.jpg←METのHPより

幕にはスペイン王家の紋章でしょうか?豪華な緞帳。幕が開くとフォンテンブローの森の場面。ドンカルロのヨンフン・リーが登場。5月にスペインで聴かれた方の評はあまり良くなかったのですが、意外にも透明感のある響く声、一途な恋心の表現にマッチしています。ただ、1幕目の毛皮の着いたコートがエスキモーの青年に見えましたが・・・。2幕目からは黒い衣装になり、貴公子らしい雰囲気になりました。

特筆すべきはホロストフスキーです。ロドリーゴ役やトロヴァトーレのルーナ伯爵など聴いてきましたが、聞かせどころのアリア以外はあまり、熱っぽさのないスタイルの歌唱が多いのです。しかし、この夜のホロさまは初めから熱く、飛ばすこと!友情を誓い合う2重唱も鳥肌ものでした。若く舞台経験の少ない韓国のテノールを支え、日本のファンに応えようと頑張るホロさま・・・素敵でした。

それに反してといっては申し訳ないのですが、パーペのフィリッポ2世の最も好まれているアリア「彼女は私を愛していない・・・」の出来は期待が大き過ぎたようです。感銘度が低かったのはヴェルディはパーペには向かないのか、準備不足なのか・・・両方かな~残念。

そして、ネトレプコキャンセルのあおりを食ったかたちで、エリザベッタからミミに役替えになったフリットリ。彼女のエリザベッタがとても楽しみだったので、代わりにポプラフスカヤと決まったときは本当にがっかりしました。2008、2009のROHでのエリザベッタがこの方でした。しかも苦手で、ブログでも相当けなしていたソプラノなのです。METに急遽呼び出されて否(多分言ったでしょうけれど)応なしの代役で遠くて危ない日本にやってきたせいか、顔色の悪い感じは隠しようもなく・・・。しかし、プロですから、こなれた役でもありますし、無難に切り抜けたのはまずまずでした。

エボリのグバノヴァもボロディナの代役でしたが、ボロディナの不参加表明が比較的早かったこともあり、安定した歌唱や演技でした。2003年のボロディナのエボリには適いませんが・・・。あのときのヴェルニケ演出の舞台での黒いドレスに黒い眼帯姿のボロディナ。その圧倒的な存在感は忘れられません。

そんな過去の舞台と絡み合った感慨深いこの夜の舞台でした。また、空席が目立ったせいもあり、独特の雰囲気も感じられました。震災や原発事故での大きな犠牲・・・以前の日本には戻れないのかも知れません。次回のMET公演のときはこれだけ高額のチケットを買うご時勢ではないかも知れません。その心細さを誰もが感じていたと思います。それを心の奥にひっそりしまいこんで、帰途につきました。ヴェルディのオペラの素晴らしさ、音楽の余韻に浸りながら・・・。

夜食はホテル近くのコンビニで買ったおにぎりとビールで済ませました。

客席からの写真撮影は禁止と放送されていましたが、アンコールのときは良いのかな~と勝手に考えて撮ってしまいました。欧米ではOKというか大目に見てもらえますので・・・。

↓ 左からホロストフスキー、パーペ、ヨンフン・リー

フランス 057.jpg フランス 058.jpg フランス 060.jpg


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コメント 10

tina

この写真異端者の火刑の場ですね。
見物の群衆が帽子をかぶっているのに違和感を覚えたのですが、Bowlesさんに教えていただいて、当時はかぶり物をするのが正装のときの作法だと知りました。
ロドリーゴも着帽ですね。
ドン・カルロの無帽が彼の精神の異常を表しているのだとは知りませんでした。

私は十日でしたが、楽しみにしていたロドリーゴが最初ちょっとさえなくて、肝心の二重唱もいまいちに感じられて?でしたが、後半さすがと思いました。
 
パーペにご不満の方が多かったようですが、始めてみたドン・カルロが藤原のものだったか、日本人で、低音にむりが感じられたので、さすがだなと思ったのですが。

ほんとにフリットリで聞きたかったですね。


by tina (2011-06-20 10:15) 

alice

tinaさま

パーペの低音は誰にも負けないほど素晴らしいと思います。私はモーツアルト(魔笛のザラストロを3回)しか聴いたことがないので、違和感があったのだと思います。
それに反してF・フルラネットは3回聴いて(そのたびに涙)いますから・・・刷り込みかな~(笑)




by alice (2011-06-20 13:54) 

レイネ

多分、Bさんご夫妻がブリュッセル遠征される目的の、ミンコさん指揮の『ユグノー教徒』@モネを昨日観賞しました。主要登場人物はダブルキャストなのですが、Bさんご夫妻は両方ご覧になるのかしら。わたしは、ペーターゼン、ドルンシュ、レージネヴァという黄金トリオの日を選びましたが、大正解。特に、最近ミンコさんがプッシュしているユリア・レージネヴァの小姓ウルバンが、予想以上の素晴らしさで鮮烈な印象を残してくれました。休憩入れて5時間というグランド・オペラを振ってくれた指揮者、お疲れ様でした。(ピイ演出の舞台も豪華絢爛で満腹感あり)
来シーズンは、DNOシーズン開幕の『イフィゲニア2部作』とモネのシーズン最後の『イル・トロヴァトーレ』がミンコさん指揮ですが、応援にいらっしゃいますか?

オペラ界のヨン様ことヨンフン・リーの『ドン・カルロ』、数年前にリエージュで観賞しましたが、好感の持てる声だしパワフルな歌唱も悪くないと思いました。DVDでばかり見ている演目ですが、ナマのほうがいいですよね。来シーズンDNOでデッカー演出の『ドン・カルロ』再演されるので、行こうかどうしようか。。。
by レイネ (2011-06-20 15:18) 

alice

レイネさま

>『ユグノー教徒』@モネ
行かれたのですね。羨ましい~!!!

ミンコ応援団のマイミクさんはBさんご夫妻を含めて5人が遠征されます。こんなに多いのはそれだけユグノーに期待が大きいからでしょうね。

プルミエ(Aキャスト)に行かれた方のつぶやきではBキャストもミンコ自身が推薦していたそうで、Bさんご夫妻は当然!両方観られます。
↓映像
https://picasaweb.google.com/Opera.houses.of.the.World/PremiereDesHuguenotsABruxelles11Juin2011#

私は7月のボーヌと8月のザルツブルグのミンコで我慢?します。来年はトロヴァトーレは行けそうですが、ウィーンのハムレットは無理かもしれません。でもハムレットのほうが魅力的なのよね。
by alice (2011-06-20 16:01) 

hbrmrs

aliceさま
ドン・カルロ、同じ日でしたね!終演が遅く、私は埼玉の自宅に帰るのさえも大変でしたが、かえってホテルの方が良かったのかもしれません。でも、メトならではの舞台を観られて私はよかったと思っています。
ホロストフスキー、さすがでしたよねー!オーラが出ていました。
カウフマンは残念でしたが、アリーチェさんROHでご覧になっているのならいいじゃないですかぁ。それだけでも羨ましいですよ。

次は8月のザルツでまた感想を共有できるかな??
by hbrmrs (2011-06-20 21:55) 

alice

hbrmrsさま

>ホロストフスキー、さすがでしたよねー!オーラが出ていました

今までのホロさまはなんだったの~といいたいくらい(誰かさんに叱られそう 笑)素晴らしかったですね!
次に聴くホロさまが怖い気もしますが・・・汗

>次は8月のザルツでまた感想を共有できるかな??

ムーティ取れました?取れなかったら行かないものね~(笑)私は取れてません・・・ぶつぶつ。





by alice (2011-06-21 00:29) 

はるる

こんばんは、18日の「ドン・カルロ」に山口から行ってきました。
例のヨン様、 確かに声量もあって声もいいかもと思えたのですが、やはり、かなり立ち姿が貧相(ごめんなさい!)に見えてしまって、ああ、カウフマン~と思わずにはいられませんでした。この日はホロ様も最後にはさすがに聴かせてはくれましたがなんだか熱いもの感じられず。代役女性陣も健闘されてたけど、全般に、低調に思えました。それにしてもMET,この時期のいろいろあっての公演でしたし...。大好きな「ドン・カルロ」、やっと生で見れたということで、記憶には残りそうです。Alice様、5回目とは羨ましい! キーンリ―サイドのロドリーゴはどうなんでしょうね?

「ユグノー」、うらやましいですね~。
来シーズンものも、なかなか悩みます。悩んでる間もまたたのしいのですけど。


by はるる (2011-06-21 20:54) 

alice

はるるさま

私と同じ遠征組ですもの、余計な出費を考えると、カウフマンのキャンセルは堪えましたね。

>キーンリ―サイドのロドリーゴはどうなんでしょうね?

好みですが、そりゃ~私はおっかけのキーンリーサイドに決まっていますです。表面は知的で冷静ですが内に秘めた熱さを感じさせるロドリーゴなのですよ~。
でも、彼はヴェルディよりモーツアルトが好きだし、得意なようです。


by alice (2011-06-22 18:03) 

Bowles

はい、帰ってきました。私はブリュセル3泊、亭主は4泊です(笑)。ライヴというのは怖ろしいもので、そこがまたおもしろさでもあるのでしょうが、亭主の感想は、Aのほうが良く、私の感想はBのほう。すべて別の日を聴いたので当然結果は違うと思います。さほど上手でないモネのオケではありますが、ミンコの指揮は素晴らしいものでした。ピの演出は、彼にしては大人しいほうかな。やはり演劇の舞台のほうが彼らしい。全体的にかなり高水準の舞台ではありましたが、亭主も私も、総合的な感銘度ということになると、もともとの曲自体の水準はユグノにはるかに劣るのに、3月のサンドリヨンが忘れられません。といっても、これだけのユグノ、そう聴ける/観られるものではないと思います。

残念ながら、aliceさんとご一緒だったこの日のドン・カルロの感想についてはパスされていただきます。料金がもっと安かったら、途中で帰ったと思う...(笑)。
by Bowles (2011-06-27 11:33) 

alice

bowlesさん

お帰りなさい!
>私はブリュセル3泊、亭主は4泊です

あらら!勘違いしてしまったのね~失礼いたしました。

ご主人の観られた日はレイネさんとご一緒のようでしたが、Bowlesさんのときはお知り合いはいらっしゃらなかったのですか?

>さほど上手でないモネのオケではありますが、ミンコの指揮は素晴らしいものでした。

応援団の一員としては嬉しい限りです~。行き倒れになるまで頑張ろう(笑)
by alice (2011-06-27 12:55) 

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