SSブログ

2011年夏の旅(18)  ザルツブルグ [2011夏パリとフランス南西部最後はザルツの旅]

8/5(金)

 ザルツブルグは5年ぶり6回目です。郊外の半日ツアーで行けるザルツカンマーグートの湖畔の町やヒットラーの山荘などはすでに回っています。ザルツブルグから行けそうなロマネスク教会(ドイツ南部)もあるのですが、往復の鉄道のことを考えるとハードです。今夜のオペラ優先で体力温存することにしました。

それと気になっていたのが、オーストリア航空のザルツブルグ→ウィーン→パリ便のこと。ぎりぎりまでJALの特典のキャンセルを待っていたため、大韓航空の帰りの便が日曜に当たりこれも空席なし。それで、1日帰国便が延びたのです。そのためウィーンで1泊してコンサートに行き、ウィーンからチューリッヒを経て帰国することになりました。ザルツからウィーンは使えると思っていたのですが、オーストリア航空の日本支社に電話して確かめたところ、一切の変更は効かないとのこと。では帰りの便は全部捨てることにしますというと、往復で格安にしたのだから、正規の片道分を請求するかもしれませんよ、などと脅すのです。今まで何度も格安往復チケットを利用して片道分を捨ててきましたが、エールフランスやイベリア航空などから一度もそのようなことはありませんでした。この対応にはがっかりしました。オーストリア航空はもう使いたくないです。

さて、ウィーンまでは列車を利用することにしました。ザルツブルグの中央駅までバスで数分。今は大改装中の駅舎の前に仮設のチケット売り場があり、明日の切符を購入。1等83.2€。帰りも同じ番号のバスで良いと思ったら、遊園地やスポーツ施設のようなところを走ります。そして元の中央駅に戻りました。運転手さんがここまま乗っていると旧市街に行くというので、ようやく安心。ザルツブルグには限らずバス路線を把握するのは乗り場も含めて、観光客には難しいです。

この日は25度くらいにまで気温も上がり、日中は快晴に恵まれました。また旧市街をあちこち歩き、大聖堂に入りました。入り口に小さなブースがあり、寄付係のおじさんが座っています。帰りに寄付をしようと2€用意して、バロックの豪華な内陣や何台もあるパイプオルガンなど眺めてさて帰ろうとしたら、その寄付係のおじさんが私を見て「なでしこジャパン、寄付してください!」と日本語で言うのです。それから財布をだすのはナンなので、コインを握っていて良かったと思いました。なでしこジャパンはヨーロッパでも有名なのでしょう。寺院の寄付集めとはいえ、日本は原発事故で余りよいイメージを持たれていないときですから、嬉しい出来事でした。

ザルツブルグは音楽祭目当てや個人の観光客など、日本人の姿は多く見かけましたが、ツアーは圧倒的に韓国と中国からが目につきました。ザルツブルグに来たらいつも寄る、中華レストランでランチ。独りなので、手軽にブッフェにしたのですが、失敗。ア・ラ・カルトでなければここは×。帰りにお口直しと夜食のため隣の日本食レストランへ行き、巻き寿司とウーロン茶のテイクアウト。結局この日もたっぷり午睡をとり、夜のオペラに備えました。

今夜が『コジ・ファン・トゥッテ』のプルミエとあって、劇場前は一層華やかです。ホテルのエレベーターであったアジア人(中国?)の奥様とドイツ人のご主人の素敵なカップルにも「ハーイ、また会いましたね」と挨拶され、なんか舞い上がり気味でうろうろ。この日は昨日よりも日本人が多く、和服の方が他にいらっしゃらなかったこともあって、何人かに声をかけられました。

席は2列目右側。早めに席につきオーケストラ・ボックスを見てましたら、ボーヌでお話した日本人のバイオリニストの女性が入ってきました。私が着物を着ていくと言っていたので、すぐ気がついてくれて「着物素敵!」と喜んでいただいて、またまた舞い上がりました。そのときのお話ではボーヌの歌手のほうが良いというメンバーもいるとのことでした。

Wolfgang A. Mozart 『 Così fan tutte 』Haus für Mozart 18:00 370€
Marc Minkowski, Musikalische Leitung
Claus Guth, Regie
Christian Schmidt, Bühnenbild
Anna Sofie Tuma, Kostüme
Olaf Winter, Licht
Andri Hardmeier, Dramaturgie
Ramses Sigl, Choreographie
Jörn H. Andresen, Choreinstudierung

BESETZUNG

Maria Bengtsson, Fiordiligi
Michèle Losier, Dorabella
Alek Shrader, Ferrando
Christopher Maltman, Guglielmo
Bo Skovhus, Don Alfonso
Anna Prohaska, Despina
Les Musiciens du Louvre • Grenoble
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor

しかし、場所と演出が変わるとこんなに違うものになるとは・・・。だからオペラ行脚はやめられないのかも知れません。ボーヌのカテドラルで聴いたのがほぼ2週間前でしたし、オーケストラも今日より小編成でした。ボーヌの日記にも書きましたが、中世の教会でのコンサート形式でした。いつものミンコのきびきびした演奏はバロック的なノスタルジアや現代的な軽やかな優雅さが交じり合って、、歌唱もバリトンが少し弱かっただけで、パーフェクトでした。さて今夜はどうなるでしょう。

グートの演出は昨夜のフィガロと同じような白い上下階の室内、それが場面によって右上の一部が木々の暗い森になります。フィガロの螺旋階段は右端の直線階段に変わり、白い翼の天使は黒い翼の悪魔・・・なんか手軽な取替え手法だなと思わざるを得ません。黒ずくめの悪魔の服装はアルフォンソの悪戯っほさや皮肉なユーモアをすっかり隠してしまいます。真の愛を憎む悪魔はデスピーナを手下に偽りの愛、手軽な愛(肉欲と言ってもいい)へと2組のカップルを誘導していきます。このオペラの甘い誘惑やユーモアに隠された面を鋭くあぶりだすという手法はわかるのですが、やはり観ていて頭では分かっていても、昨夜と同じで総体としては面白くないのです。姉妹の泥んこ遊びや壁にSi(伊語/英語でYes)と書いたりする、姉妹の堕落を象徴するような場面などには拒否反応(笑)「女はみんなこうしたもの」って?失笑がもれ聴こえましたが、私も好みではありません。オペラは音楽と共に情感豊かに感じるものがあってこそと思いました。

しかし、ミンコウスキーの指揮による躍動感あふれる前奏曲から始まる若い男女のシリアスな心理劇。それにぴったりマッチする現代感覚をそなえた魅惑的な演奏は素晴らしい!!!

歌手はミンコウスキーが決めるのではなくて、ザルツブルグで準備された歌手たちとのことですが、ボーヌの後、すぐにザルツに来たとしても2週間弱の短期間でこれだけの音楽を構成、完成させるわけですから、改めてミンコウスキーとMDLGのみなさんに敬意を表したいと思います。

歌手は主役の若い恋人たち4人はやはり、今一歩と言う方が多かったです。フォルデリージのBengtssonとドラベッラのLosierに限ってはボーヌと比べても、また以前ザルツで観た同オペラのイヴェッリやガランチャに比べても、あまり惹かれる点がなかったのが残念でした。グリエルモのMaltmanは声量があり、大柄な体育系のスタイルでアクションも自然。フェルランドのShraderは初日で硬くなっていたのかもしれませんが、演技もぎこちなく歌唱もむらがありました。アルフォンソのSkovhusはキャラにぴったりですし、まあまあ。デスピーナの Prohaskaは演技、歌唱とも一番印象に残る熱演でした。再度聴いてみたいと思ったのはProhaska(28歳!)だけ・・・。昨日の若き指揮者Ticciatiと共に、今回のザルツでの収穫です。

プルミエとあって、カーテンコールは盛り上がりました。ふと横を見ると地元のTVのカメラマンが何人か来ていて、いきなり私にカメラをむけるではありませんか!着物だったので、あの日本からも来ていると思ったのでしょうか。穴があったら入りたい・・・と俯く「なでしこジャパン」じゃなかった「ヤマトなでしこ」(あはは)

DSCF6232.jpg

 DSCF6231.jpg

 帰りにバイオリニストの方と約束した楽屋口とみられる場所に立っていますと、ぞくぞく関係者が入っていきます。まもなく今夜はプルミエのパーティがあると誘われたのですが、これなら関係者だけでも大勢ですし、かえってご迷惑と思い、また雨も激しく降ってきましたので、辞退させていただいて帰途に着きました。幕間にお話したバリトン大好きの日本人シニアの女性が傍にいましたので、雨宿りがてらビアホール兼レストランに入りお喋り。彼女は大のキーンリーサイド・ファンの方で、ほとんどの舞台を追っかけしているそうで、脱帽。キーンリーサイドとのツーショット写真やらプライベートのお話も聞かせていただきました。帰りは店の前で丁度拾えたタクシーでホテルへ。

長い旅の最後の贅沢なザルツブルグ滞在でした。疲れもなく元気一杯で帰国できそう~と思ったのですが・・・翌日は思わぬ落とし穴が待っていたのです。

 


nice!(0)  コメント(8) 

nice! 0

コメント 8

レイネ

オーストリア航空日本支社の対応が、ちょっと不可解ですね。日本・欧州間の往復切符を格安で買って復路分は捨てたこと、わたしも何度かありますが、ノーショーで差額請求されたことはありません。往路の変更がきかないのはわかるけど。ウィーンにはオーストリアンが安くて発着時間もいいので、次回も利用するつもりですが、なんだか嫌な感じ。。。

やっぱり着物の威力は凄いですね。初日に華やぎを添えてくれてありがとう、ということでしょう。ロングドレスよりも、絶対に日本女性には似合いますし。

懸案だったDNOの『イフィゲニア2部作』@アムスですが、舞台上の仮設コーラス席が格安でゲットできました。字幕は見えませんが、ミンコさんと対峙する位置。モネですでに観賞してるプロダクションですが、歌手と指揮者とオケが変わるのと、文字通り異なる視点から見ることができるので、期待が高まってます。
by レイネ (2011-08-30 19:45) 

alice

レイネさま、ウィーンを経由するときは絶対安くて便も多いのでオーストリア航空ですよね!
HPから予約できなくて、電話やFAXで予約する頃から使っていたので、その冷たい態度にがっかりしました。ウィーンパリ間は不要になったのだから、手数料は払うからといったのですが・・・。手荷物だけだったらウィーンで降りちゃっても良いのかしら?
もしも、今月のカード請求に載ってきたらどうしようかと心配しましたが、今のところは大丈夫なようです。

DNOの『イフィゲニア2部作』@アムス、羨ましいです。MDLGのバイオリニストの方も日本のファンも何人かはアムスに行くはずと伝えたら、喜んでました。機会があったらお声を掛けてみてね。ザルツで着物をきてたひとの友人といえば分かってもらえると思います。
by alice (2011-08-30 23:18) 

わに子

こんにちは。今回も楽しく拝見させていただいています。
私もEU圏内ですが手荷物でよく帰り便を捨ています。逆や途中の便をスキップすると日本帰国便でもそれ以降はキャンセルしたとみなされて、それ以降の便に一切乗れなくなるとはよく聞きますが。。。
予約の時点で支払いは完了しているのですから問題はないと思います。ただ、片道分購入より往復便が安い現実を悪用しないがためのマニアル対応なのだと思います。特に外国に本社のある航空会社の日本人職員の言う事は。。。。私は前対象外と言われたキャンペーンにダメ元で応募したら1年間G会員になれた実例があります。^^
それより、つづきが気になります。。。
by わに子 (2011-08-31 06:52) 

にしむら

aliceさんのブログ、妻と二人でいつもとても楽しみにしています。実は8月5日に私たち夫婦もザルツブルクに入りました。ホテル・ブリストルの前を通りながら、「ここにaliceさんが泊まっていらっしゃるので、会いに行こうか」なんて話していたのですが、オペラの前で午睡をとっていらっしゃるかも知れず、ご遠慮したのでした。(お目にかかれる千載一遇のチャンスを逃しました!)私たちも「コジ」「マクベス」、ウィーン・フィル、ネトレプコの出たロッシーニ「スターバト・マーテル」などを楽しんで帰国しました。私たちは二人とも60台前半ですが、どうぞaliceさんも70歳で止めにしようかなんておっしゃらず、お元気で旅を続けてくださいませ。

by にしむら (2011-08-31 10:18) 

alice

わに子さま、そもそも片道より往復が安いなんておかしいですよね。イベリア航空だけは全部ではありませんが片道で格安がありました。サンティアゴ→パリ、テネリフェ→バルセロナでした。米国内も片道が難なく取れますし、航空界全般の決まりごとというわけでもなさそうです。利用者の使い勝手が良くなるように改善してほしいです。

オーストリア航空の対応はマニアル通りとはいえ、言い方が冷酷な感じで、もう少し愛想良くお願いしたいです。

by alice (2011-08-31 13:08) 

alice

にしむらさま、ようこそ!いつも読んでいただいて、ありがとうございます。

ザルツではコジだけご一緒だったのですね。お目にかかれなくて残念です。

拙ブログがご縁で、遠征先でお会いする機会が持て、その後の交流が続いている方もいらっしゃいます。

インターネット上だけの繋がりが手ごたえのあるものに変って、世界は広がるのを感じました。

お会いできるチャンスがきますように~♪
by alice (2011-08-31 13:22) 

hbrmrs

こんにちは。オーストリア航空の対応は、まるで悪名名高いエールフランスのようで、同社によく同様の態度を取られた私は、おもわず共感です。

コジの演出については、私は隙がなく緻密に計算されたよく出来たプロダクションだと高く評価しました。人それぞれの感じ方があり、好みがあるのでいいと思います。

何はともあれ、ミンコの素晴らしい演奏が聞けたのは良かったですね。
そういえば、来年ミンコはオーケストラ・アンサンブル金沢を振りに日本に来ますが、金沢までご出張されますか?
by hbrmrs (2011-09-04 11:16) 

alice

hbrmrsさま、まあ!エール・フランスでもそうなのですか。最近はベルリンエアーが頑張っているようです。路線が増えたみたいです。以前私のミスで予約をダブったことがあるのですが、カウンターで2回クリックしちゃったのね~と言って、すぐ手続きしてくれました。もちろん後から料金が戻ってきました。凄く感じが良かったので、ベルリンエアーはお勧めです。

グートの演出は二夜続けて観たのと、最近は天使か悪魔か羽根をつけるのが、流行っているみたいで、辟易した感がありました。

ミンコは金沢だけなのかしら?7月末ですもの札幌にも来ていただきたい・・・無理ねえ、PMFの時期だわ。
by alice (2011-09-04 15:04) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。