SSブログ

2012年冬の旅(6) ウィーン [2012冬パリとバルセロナ、スペイン北部のロマネ]

1/20(金)

気温は札幌に比べるとそう低くはありませんが、冷たい雨交じりの風が強く、街歩きの気分にはなれません。こういう日はどこかの美術館に潜り込んでしまおう・・・というわけで初訪問のMuseum Hundertwassrへ。事前調査なしでしたのでホテルのコンシェルジュにパンフレットをもらいました。ラッキーなことにHenri cartier-Bressonの展覧会開催中!最近ウィーン市内は中心部の徒歩圏内以外はあまり回っていませんでしたので、メトロからトラムに乗り換えて訪ねるミュージアムはちょっと新鮮な気持でした。トラムを降りて街角を曲がるとすぐにカラフルな建物が見えてきました。

PHOTO176.JPG

PHOTO177.JPG

PHOTO178.JPG

1階ロビーの奇妙な噴水や幼稚園児たちがおやつを食べている様子などを眺めた後、コートや傘など預け階段を上って展示室へ。入場料12€(特別展含む)

PHOTO183.JPG

PHOTO182.JPG

フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(Friedensreich Hundertwasser(1928~2000)オーストリアの建築家、画家/母がユダヤ系のチェコ人であったため父の死後、10歳のときユダヤ街に追いやられ、家の地下室に隠れて、弾圧から逃れた経験を持つ。そのため自然への渇望は大きかった。近代の建物の無機質感を嫌い、断固として定規で引いたような直線を拒否したことでも知られている。戦後北アフリカに旅した経験も自然との共生をめざした作風に影響が大きい。ウィーン市内の集合住宅やごみ焼却場のほか日本にも大阪のごみ処理場などの作品が残されている。

↓ 晩年のフンデルトヴァッサー(絵葉書)

PHOTO001 (2).JPG

この美術館は元は家具工場だった建物をフンデルトヴァッサー設計で改築。カメラは階上からは禁止です。床タイルも歪んで貼られています。時々躓きそうになりました(笑)が、土の上を歩いている感触が残るのはさすがです。

PHOTO186.JPG

絵画、プリント作品、工芸品、建築設計図などの展示室を回ったあとブレッソンの写真展「Der Kompass im Auge」(瞳の中のコンパス)へ。

アンリ・カルティエ-ブレッソン henri Cartier-Bresson(1908~2004)フランス人の写真家/20代前半にそれまで画家志望だったブレッソンはマン・レイの写真に刺激され写真家の道を進むことになる。20代後半にはジャン・ルノワールなどのもとで助手として映画の仕事に携わったこともある。このころ写真家のロバート・キャパと出会う。戦時中はフランス軍に入隊し従軍。ドイツの捕虜になったが、脱走して戦争終結までレジスタンス運動に加わった。戦後は写真集団マグナムをキャパやシーモアらと結成。

アメリカ、中国、ソビィエト連邦、インドなど世界中を訪問(地図と日時つき)。今回の展覧会のタイトルは[Your compass must be in your eye ]という彼の言葉から使われている。

数多くの芸術家のポートレートのなかで目を引いたのはルイス・カーン(フィラデルフィアのオフィスで1960)、黒猫を抱いたストラヴィンスキー(カリフォルニア1947)など。

↓ トルーマン・カポーティTruman Capote(1947)アメリカの小説家23歳/絵葉書

PHOTO041.JPG

 ↓戦後1954年のソヴィエト連邦に初めて許可されたカメラマンとして赤の広場の情景(サイトから拝借)

photo_bio63_72.jpg

↓ アメリカの街角(サイトから拝借)

photo.jpg

圧巻だったのはインドでのガンジー暗殺前夜から葬式までの写真の数々。奔流のような時代の動き、インドの人々の嘆きに見ているほうも巻き込まれそうな迫力。仏教、禅の哲学にインスピレーションを受けたという。ヒマラヤの山脈を遠くに尼僧たちの祈る後姿・・・。NETで写真は見つけられませんでした。残念。

これを観るためにウィーンに来たのだわ~と、昨夜の失望も晴れる気分で鑑賞終了。ランチは一階のレストランで。

↓ 昼前はがらがらでしたが

PHOTO185.JPG

見学が終わって行ってみるとかなり混んできて、↓ご近所の方らしい若いご夫婦は赤ちゃんの乳母車を外のテラスに置いたままでネットに夢中。気になって見に行ってみたら、すっぽりフードに覆われて赤ちゃんは見えないようになっていました。寝てるから外のほうが静かで良いと思っているのかしら?寒いのにと思うのは私だけではなくて、サービスのおねえさんも何か言ってましたが、ほっといて、みたいな感じ。小1時間、結局帰るまでそのまま・・・。

PHOTO189.JPG

↓ おねえさんお勧めのソーダと赤ワインとミックス(cisprityten?)、牛肉と野菜のゼリー風サラダ、麦団子入りコンソメスープ、コーヒー。〆て20€。スープが特に美味しくてにっこり。

PHOTO188.JPG

PHOTO191.JPG 

 雨も止んで晴れ間の出た街を歩きホテルに戻り、仮眠。夜は国立歌劇場でオペラを観ました。

ヴェルディ『仮面舞踏会』ウィーンSO 19:00開演

Un ballo in maschera |Giuseppe Verdi

Philippe Auguin | Dirigent
Gianfranco de Bosio | Regie
Emanuele Luzzati | Bühnenbild
Santuzza Calì | Kostüme

Neil Shicoff / Gustaf III., König von Schweden                                         Leo Nucci /Graf René Ankarström    
babara Haveman/ Amelia, seine Gattin
Zoryana Kushpler/Oscar

Orchester der Wiener Staatsoper


チケット197eur(席は平土間の4列目左側)

 仮面舞踏会は数年前のMETで聴いて以来2回目でした。9月のボローニャ来日公演直前に亡くなったリチートラがグスタフ役を歌っていました。その役はシコフでしたが、なんたってヴェルディの恋する若き王の表現にはとても無理。高音も絞り出すような感じで苦しかったです。ヴィジュアル的にも動きも、もっと年上のヌッチにさえ負けそう~。キーンリーサイドの代役のヌッチはメーキャップのカバーもあり、姿勢もきりっとして若々しく見えました。1幕目から飛ばし過ぎたのか3幕のアリアはレチタティーボの合間に何度か小さい咳払いや水を飲みながら苦しそうに歌いました。それ以外のヌッチはブラボー!でした。歌劇場のオーケストラも相変わらず素晴らしい響きとオーギャンの手堅い指揮で、それなりにヴェルディを愉しむことができました。

舞台は書割で安っぽいうえにごたごた趣味で、今どきこんなのありか~?登場人物の動きも少なく面白みに欠け・・・キーンリーサイドが断ったのも無理ないなって感じでした。経費節減にしては当初のキャストは豪華ですし・・・腑に落ちません。いろいろとオペラ界に不透明なことを感じることが多くなってきました。そろそろ潮時なのかもしれません。オペラに燃えるものが感じられなくなってくると、わざわざ海外まで観に来る必要もないということです。K様もそのようなことをおっしゃっていました・・・。

ウィーンの2日間も瞬く間に終わり、明日はベルリンです。まだまだ先は長い旅です。今までにないほど気力、体力の衰えを感じながら眠りにつきました。


nice!(0)  コメント(8) 

nice! 0

コメント 8

tina

相変わらず、いい旅をしていらっしゃますね。お天気が悪くても、体調にいささか難があっても、aliceさんがお書きになると、うらやましくなるような旅になってしまう・・・
このアパート、いつかテレビで見たような気がします。

仮面舞踏会は確かメトが日本に来た時、ドミンゴで聞いたと思います。ずいぶん前ですね同じ年にボローニャがヌッチのりゴレットを持ってきて、両方は無理で行かなかったことをずーっと残念に思っていました。

シコフはフェ二―チェで椿姫に出たのをテレビで見て感心しなかったのですが、肉声を聞いたのはサントリーのホールオペラでトスカのカヴァラドッシを聞いたのが最初で最後です。
急用で行かれなかった人の切符を引き受けたのですが、歌手の後ろ姿しか見えない席でも、スカルピアの声はよく聞こえるのに、主役の二人は駄目だったことを覚えています。
ヌッチは最近リサイタルを聞いてまだ元気なんだなと思いましたが、オペラは体力的に大変でしょうね。
好きな歌手ですが。
by tina (2012-02-11 13:28) 

alice

tinaさま、ヌッチは体力的にオペラは無理になってきてますね。今回の仮面も後半になって急に衰えた様子になってたので・・・。
問題はシコフで、まだヌッチより若いはずなのに、もう過去の人って感じでした。3年前にスペードの女王を聴いたときも感じたのですが、姿勢も悪くて猫背気味なのも気になりました。

東京は音楽や美術など、たくさん催しがあって羨ましいです。地方で行かれない分、海外ではついつい欲張ってしまいます。計画は80%くらいしか達成できなかったのですが、私の体力ではこんなものかなと思っています。
by alice (2012-02-11 14:53) 

yamorin

こんにちは。

同じ日に仮面舞踏会を観ておりました。ヌッチはバックステージでけっこう咳をしていたので、たぶん風邪ひきだったのでしょう。肝心のアリアの最中で水飲んで咳払いしてたので、えええ??と思いましたが。。。

シコフは2幕までは音程も不安定でよろよろでしたが、最後の最後でいきなり調子をあげたように感じました。たぶん最終日の最後なので力を振り絞ったのかと。逆にヌッチが後半よろけてたので、そう思った部分もあったかもしれません。

私は到着したその日にダムラウ&メストレのキャンセルをメールで受け取ってたので、キーンリサイドの降板とダブルショックでしたが、仮面舞踏会の翌日のセヴィリアの理髪師が、若手キャスト中心でパワー炸裂の面白い公演でした。
by yamorin (2012-02-12 09:22) 

alice

yamorinさま、歌劇場ではすれ違っていたのですね。親しくしているオペラ仲間とでも同じ演目を観るときでさえ、なかなか一緒の日程は組めないものなので、偶然のチャンスを惜しく思います。

休憩のとき、昨年ザルツで知り合いになった方とバッタリ!席も近くお話しできました。彼女はキーンリーサイド・ファンクラブの会長みたいな方なので、いろいろ裏話が聞けました(内密なことも 笑)


by alice (2012-02-12 17:08) 

hbrmrs

こんにちは。長旅からおかえりなさいませ。
そうですか、シコフはイマイチでしたか。確かにもう年だもんなー。

今回、ダムラウのリサイタルにしても、キーンリーサイドやウェストブルックの変更にしても、本当に残念です。でも、これはオペラの世界では日常茶飯事。場数を踏めば踏むほど、こういうことに遭遇します。私だって、何度もこういう目に遭っています。ついこの間の年末年始旅行だってそうでしたしね。

「もう、オペラは潮時」と思ってしまうのも、仕方が無いかもしれませんが、その代わり「生きてて良かった!」と思うくらい、痺れるような公演に遭遇することだってあります。

アリーチェさんの、そういう感動の報告記を楽しみにしていますので、是非これからもがんばってくださいっ!!
by hbrmrs (2012-02-12 17:14) 

alice

hbrmrsさま、ぼやきがお目に留まったようでお恥ずかしい・・・でも、この後のミンコの連続2夜は最高でしたので…コロコロと女心(おばば心)は変わります(笑)

>「生きてて良かった!」と思うくらい、痺れるような公演に遭遇することだってあります

そうですね!励ましていただいて嬉しいです~☆

それにしてもウィーンはまだしも今回行ったベルリン、バルセロナも日本人の観客はぐっと少なくなりました。

バルセロナのリセウ劇場も政府からの援助が減って、来シーズンは確定していた公演がなくなることもあるそうで・・・寂しいです。
by alice (2012-02-12 17:57) 

yamorin

あら、もしかしたら昨夏のザルツにもいらしてました?

私も8月にマクベスとフィガロとサンタチェチーリアのコンサートで遠征しておりましたので、どこかですれ違っていたかもしれませんね。

サイモンはどうやら奥様の病気と子どもの世話で声を枯らしてしまってたようですね。ROHのフィガロもキャンセルして、深刻な病気だったらどうしようかと気を揉んでいたので、ちょっとほっとしておりました。内密なお話、、、聞きたいです。
by yamorin (2012-02-12 18:58) 

alice

yamorinさま、ザルツは8月初旬にフィガロとコジだけですが観てきました。今年は孫たちの来襲が予想されますので、8月末の音楽祭も終わるころになります。果たして希望通りのチケットが取れるかどうか・・・

サイモンは子供を持ったのが遅かったので、若くはない子育て大変ですね~これからキャンセルが増えるかもしれません(ファンとしては残念 涙)
by alice (2012-02-12 22:18) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。