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2005年夏の旅(2 続) ローマ [2005夏2 ペーザロ、ザルツブルクから北伊への]

~続きです。

 カンピドーリオの丘から緩やかな坂道を下りテヴェレ川の方向へ。車の往来する広い道路の向こうに古代ローマの遺跡マルケウス劇場が見えてきました。川の手前の右手がユダヤ人の住むゲットー地区です。

 実はこの旅の前にBowlesさまから勧められたのが河島英昭著『イタリア・ユダヤ人の風景』でした。そのなかにローマのゲットーに住むユダヤ人の受難の記述があります。第二次大戦下のファシズムの嵐のなか無辜の民がマルケウス劇場に何千人も集められて、ここから収容所へ送られ、ホロコーストの犠牲になりました。作者はヴェネチア、トリエステ、フェッラーラにも取材しました。今回の旅の最後はトリエステ・・・。

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(この旅から7年・・・このブログを書くために再読が必要と思いましたが、本棚に見当たりません。記憶違いがあるかもしれませんので、お気付きの点がありましたらコメントお寄せくださいませ)上の写真はアマゾンの本の紹介から拝借。

 この本を読むまでイタリアの各地で起こったユダヤ人に対する極めて非人間的な行為、特にローマ郊外でのナチスによる虐殺は読んでいても血が凍る思いでした。それまでは遠い外国での出来事として、それも映画『ライフ・イズ・ビューティフル』くらいでしか想像できませんでした。この本を読んで初めてその重い事実を突きつけられ、慄然としました。今でもパレスティナ問題として、その連綿と続く民族や宗教紛争、テロとの戦いも含めて、私たちは知らなければならないことが多いのです。その想いが単なるローマのツーリストであっても、ここに向かわせたのかもしれません。

 マルケウス劇場はシーザーが建設を開始、紀元前11年にアウグストゥスが完成させた円形競技場です。内部は見学不可。観光客の姿もなく、周りは夏草が生い茂っている荒れた雰囲気でした。横を通り過ぎただけで、そのときのユダヤ人の絶望の声が聞こえるようで、悲哀感で胸がつぶれそうになりました。

↓ マルケス劇場近くのオッタヴィアの列柱付近

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 ゲットーへの入り口コーナーのカフェでひと休み。暑いのでジェラートが美味しい!お店の壁のタイルにユダヤの星の模様があり、青年がきびきび働いていました。ファラフェルサンドもとても美味しそうでした。この横の道からシナゴークまでは裏道を選びながら歩きました。大戦前は狭い区域に押し込められるように大勢のユダヤ人が住んでいたのです。

↓ 川の畔にシナゴークの大きな白い建物

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 シナゴークの内部を見学をしました。入口はテロを警戒して厳重な荷物検査がありました。入口の左壁に第二次大戦の1943年10月に起きた悲劇の記念碑が据えられていました。1943年は私の生まれた年です。日本もイタリアも悲惨な戦争のただなかにあった年であることを改めて痛感しました。

さて、内部の見学は時間制のガイドツアーになっています。前のツアーが終わるまで、小さな博物館で聖具やホロコースト関係の展示物を見学。シナゴークの内部は外観からもわかるように天井も高く広い空間です。婦人用の2階席があり、古代の神殿風な柱が並んでいます。ベンチに腰かけて、ガイドさんの説明が30分ほどあり、イタリア語と英語だったと思います。ユダヤの歴史や信仰の話は難しくて、よくわからないので自由に見学したかったのですが、それは許可されませんでした。

 正午はとうに過ぎて、おなかもペコペコでした。近くのユダヤ料理のレストランで、楽しみにしていたカルチョッフイのユダヤ風とパスタをいただきました。素揚げとはいえかなり油っぽかったです。

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 ここからテヴェレ川の中州のティベリーナ島を横断して、トラステヴィレ地区へ。ところが川の近くの公園の木陰に怪しい男が・・・なんと注射中(麻薬男!)。急いでこの場を離れましたが、ローマ恐怖症2度目発生。大きな広場からテルミネ駅へ戻るバスに乗車して、次の目的地へ。バルベリーニ広場で降り、坂道を上ってバルベリーニ美術館へ。

↓ バルベリーニ宮(国立古典絵画館)/バロック様式の代表的な建築

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↓ この美術館の目玉はラファエッロの『ラ・フォルナリーナ』(1518~1519)85×60/ラファエッロの恋人と言われるパン屋の娘をモデルに描いたという伝説の絵画。カメラ禁止のため、このとき購入した絵葉書をアップしました。

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↓ カラヴァッジョ『ナルキッソス』(1595頃)112×92

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↓ カラヴァッジョ『ホロフェルネスの首を斬るユディト』(1595~96) 145×195

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カラヴァッジョはこのほかにも『瞑想の聖フランチェスコがあり、カラヴァッジョファンには悦ばしい時間を過ごせる美術館です。ほかにもホルバイン、フィリッポ・リッピなど名画多数。

バルベリーニ家の紋章でしょうか、通路の廊下や階段室にも蜂の浮彫装飾ががあちこちに見られました。他にはサロンなども公開していたようですが、ここは名画だけで満足。次の目的地を目指しました。

 もうひと頑張りと、バルベリーニ美術館前の坂を上り、4つの噴水を左折して9月20日通りを数分歩きますと、

↓ モーゼの噴水

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その左角にバロック様式のサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会が建っています。バロックの教会には興味はありませんが、この教会には以前から観たいと思っていたバロックの巨匠ベルリー二の祭壇彫刻があります。撮影はOKですが、ピンボケ・・・悪戯っぽい表情の天使と聖テレーザの観方によっては官能的にも窺える半分行っちゃった表情。でも美しく魅惑的でした。そのためここの礼拝堂は大人気です。

↓ べルリーニ『聖テレーザの法悦』1640年代後半

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 余談ですが、この後2009年にローマを舞台にしたサスペンス小説(ダン・ブラウン『天使と悪魔』)の映画化がありました。原作も読んで映画も観ました。ローマの街を駆け回る主人公の謎解きアクションは点在するベルリーニの彫刻も多数で、それなりに面白かったものの、このサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会はまったくの偽物…最後火災になるので仕方ないのですが、聖テレーサもすぐにわかる模造品なので、ややがっかりでした。本物を巧く撮影できなかったのかしら?

 さて、まだまだ真夏の太陽は沈みませんが、私は疲れ果ててしまいました。

↓ それでもサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会の古代風なファサードを見るとふらふらとなかに入り、ちょっぴり見学して

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 テルミネ駅前からバスに乗って、ホテルに戻りました。夕食はパンテオンの近くのトラットリアで、ピザを食べました。夕涼みがてらの人々でどこもかなり混んでいました。暗くなると蚊が怖いのでさっさとホテルに戻り、明日からの旅支度をして就寝。


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