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2006初夏の旅~アムステルダム(1) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

 6月は札幌もライラックの咲く快適な季節なので、少しは逡巡したものの、ヨーロッパも陽が長く旅に適した季節だし・・・パリからのノルマンディ小旅行も楽しみ!というわけで出発。

日程/アムステルダム(2)~ブリュッセル(1)~パリ (3)~カーン(2)~パリ(4)~アムステルダム(2)

14泊16日

↓MAP

 

 

6/16   札幌~羽田・・・成田~アムステルダム

てるてる坊主の旅立ちには珍しい悪天候の日だったが、飛行機の遅れもなく、ほぼ定刻どおりに夕方のアムステルダム・スキポール空港に到着。

サッカーのW杯レンブラント生誕400年の特別展覧会のため適当な宿がなかなかとれなかった。仕方なくダム広場にある4★のHotel De Roode Leeuwを予約。ここは1階に有名な老舗のレストランがある。早速この夜はここで食事と予定していたのだが、週末で満席とのこと。ルームサービスならOKといわれスープとスタムポット(オランダ料理で美味しいそう)とオーダーしたのだが・・・そのマズイこと。(涙)部屋は静かだが広さもインテリアも普通の3★並。札幌にくらべると日没が3~4時間も遅く、気温も25度くらい。なかなか夏らしくならない北海道から来たので暑く感じた。ダム広場はこの日はオランダチームがWC予選で勝利したので若者たちが大騒ぎ。優勝したらどんなふうになるんだろうと空恐ろしい。10時半ころようやく暗くなって、これから夏の旅をするんだなあと実感がわいてきた。

↓ホテルの前からアムステルダム中央駅方向を撮影。近そうに見えるが徒歩10分以上はかかる。

↓宿泊者の朝食室にもなっている豪華な内装のレストラン

 


2006初夏の旅~アムステルダム(2) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/17   アムステルダムのレンブラント

アムステルダムは1994.1995.1999と今回は7年ぶり4回目の訪問。ある程度の地理はわかっているつもりだが電車の番号を確認してから出かける。だが停留所に人影がない。電車も来ない。不審に思って側に待機中のタクシーに尋ねると午前中はストップだとのこと。それじゃ乗せてと今日のハイライトの「レンブラントとカラヴァッジォ2人展」の開かれているゴッホ美術館へ。ところが美術館の前は人の波でごった返し・・・日本でネット予約してきたコピーのチケットを握り締め進むと、ようやくチケットをすでに持っている人用のラインが見えてきた。ヤレヤレ。日程を2日間前倒ししてまでここに来たかったのはレンブラントの生誕400年記念のこの特別展のため。しかし翌日でこの催しも閉幕してしまうという土曜日だったのが災い。押すな押すなの大盛況の美術鑑賞はホントに辛い。いつもヨーロッパの美術館ではのんびりなので異常ともいえる体験だった。しかしテーマ別に並べられた2大巨匠の光と影の深い描写を見比べるというとてつもない贅沢さにため息・・・ついで?にゴッホのコレクションも鑑賞。

↓ 「レンブラントとカラヴァッジョ2人展」の図録

アムステルダム レンブラント展カタログ.jpeg 

 

国立博物館は大改修中。(右裏のフィリップ棟だけレンブラントの作品中心に公開中)工事中の足場に掲げられたレンブラントの自画像のポスター

国立博物館も凄い行列なので、ここは旅の最後に再訪するときに来る事にして、運河のボートでレンブラントの家に向かった。ここは初訪問。記念の催しが組まれていて、画家が実際ここに住んでいた期間に描かれた絵画、版画を多数展示。部屋の内部の様子がそのまま作品に描かれているものもあり臨場感あふれた企画。またそれほど混雑していなかったのも良かった。厚いカタログを2冊持つのは無理なのでここのは購入を見合わせた。帰国後ネット書店で注文もできるはず。

→レンブラントの家

この周辺もカフェに人が大勢。遅いランチを済ませ1キロほど散歩しながらホテルへ。朝は涼しかったのに午後になると西日が暑くヘトヘトになって辿り着いた。2,3時間休憩した後中央駅へ徒歩で行き、翌日のブラッセルまでのタリスの指定券を購入。帰りはトラムでムント広場近くまで行き、賑わっているイタリアレストランで夕食。味は普通だったがイタリア人の経営者一家が2階へ行ったりきたりで落ち着かないし、サービスも上の空。2階でサッカーのTV観戦か?夏のアムステルダムは初めてだったが、街や駅の混雑はサッカーのW杯の影響が大きいようだ。各国のサポーターたちが試合の応援の合間に観光するには確かに良いところだと思う。

 


2006初夏の旅~ブラッセル(1) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/18  アムステルダム~ブラッセル

今日のオペラはマチネなので昼まで着くように出発。荷物があるのでタクシーを頼んだのだが[近いからタクシーは来ないから、駅までボーイさんが送ってくれる]と言う。それでは悪いような気がして、目の前のトラムに乗っていくから大丈夫と宿を出た。中途半端な距離のホテルってこれだから×。トラムは乗り降りのステップが低く、荷物も運びやすく助かった。タリスの一等車は座席での食事サービスがついてリッチ。(といってもサンドイッチと飲み物くらい)またタクシーの予約サービスもあり、タクシーの運転手さんがホームまで迎えに来てくれる。ブラッセルはそんなにタクシーは混んでいなかったが翌日のパリ北駅はタクシー乗り場に長い行列。このサービスを使って大正解だった。

ホテルは久しぶりの5★を奮発した。ここは1994年に初めて一人旅をしたとき泊まった思い出の宿。↓Royal Windsor Hotel Grand Place

朝は寒いくらい涼しかったのに、昼頃からカーッと太陽が照りつける汗ばむ陽気。着替えをしてから、観光客でごった返しのグラン・プラスを抜け徒歩10分くらい、広場の奥にモネ劇場は建っている。窓口でチケットを受け取り中へ。

 ヴェルディ「ファルスタッフ」15:00開演

指揮:大野和士 演出:Willy Decker/  Falstaff:Michele Pertusi  Ford:Roberto De CAndia  Alice Ford:Ana Ibarra  Mrs Quickly:Elena Zaremba  Mrs Meg Page:Elena Belfiore  Dr Cajus:Lorenzo Carola  Nannetta:Laura Giordano  Fenton:Chares Castronovo

舞台は一幕から3幕まで変わらず天井の高いフランス風のカフェのセット。ここでファルスタッフは住み込み?飲んだくれているところから始まる。夫人たちもここに客になってやってきてファルスタッフを懲らしめる相談をし、ナンネッタたちは恋を語らい、洗濯籠に入れられたファルスタッフは窓から捨てられ、最後の幕はその窓から大きな木が入れられる・・・登場人物が激しく行ったりきたりするので、なんか落ち着かない。しかし、歌手のレベルは高く、初めてのモネ劇場の舞台を楽しむことができた。「ファルスタッフ」の生はこれで5回目、大野さんの指揮も軽やか流麗、コーラスの 統率もとれ、私の「ファルスタッフ」体験のなかでは高得点。

夕方オペラのはねた後は一度ホテルへ戻り休憩。夕食はグランプラス近くの食い倒れ横丁へ。↓オマール海老がドンとのっかったパエリアを食べた。

 

 

 

 

 

 


2006初夏の旅~パリ(1) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/19 ブラッセル12:40~パリ14:05

朝はアンティックのベルギー・レースが見たくて、あちこちのレース屋さんを覗きに行った。私の好きなホビーのなかで、肩こりがひどく断念したことのひとつがベルギー・レースに代表されるボビン・レース編み。孫娘のお人形つくりを来年オーダーするときに良いのがあればと思ったけれど・・・高額で断念。結局適当なテーブルセンターを買い求めただけに終わる。昨日のグラン・プラスはラベンダーの畑を模した大掛かりな美しいセットで飾られ、とても良い香りだったが、朝にはもうトラックが乗りつけ片づけ中。今回は一泊だけだったので時間がなく回れなかったアール・ヌーヴォー建築。情報だけでもと思い広場の(i)に行ってみた。すると一昨年には資料はコピー一枚だけだったのに3€ながら立派なパンフができていた。もちろん次回のブラッセル訪問のため購入・・・っていつになるか?

ブラッセルからパリまでは1時間半くらい。一等席には昨日よりぐっとリッチなランチのサービス。タリス開業10周年のためのムニュ、ポーチドサーモンとホワイトアスパラ&スモークサーモンとグリーンアスパラのお皿、チーズ、フルーツ、ワインも銘柄ものを選べ、お味もGOOD!そして昨日と同様にタクシーの運転手さんがコンコースまで来ていて、荷物も地下の乗り場まで運んでくれて・・・一時的なお金持ち気分。(笑)そしてマレのプチ・ホテルへ。

Caron de Beaumarchaisはパリの素敵なプチ・ホテルとして雑誌「フィガロ」にも紹介されている。同じマレにある定宿の2★ホテルに較べると、やはりお洒落なホテル。ここに合計7泊した。初めの3泊は6階の中庭側。Beaumarchaisにちなんだアンティックなピアノやハープの置かれた優雅なロービーとは違って質素系のやや狭い部屋・・・でもひとりには充分の広さ。このクラスにしては珍しく生花も飾られ、美味しい朝食もいただけるので花◎。

朝から曇って涼しかったが夕方から西日カンカンになり、急に暑くなった。今夜はシャンゼリゼ劇場。

モーツァルト「ドン・ジョヴァン二」 19:30開演

指揮:Evelino Pido 演出:Andre Engel / Don Giovanni:Lucio Gallo  Il Commendatore:Giovanni Batista Parodi  Donna Anna:Patrizia Ciofi  Don Otaavio:Francesco Meli  Donna Elvira:Alexandrina pendatchanska  Leporello:Lorenzo Regazzo  Masetto:Alessandro luongo  Zerlina:anna Bonitatibus

ドン・ジョヴァン二が配役変更になってガッロ。いかにもイタリアの伊達男風。カリスマ性には欠けるけど、演出が現代を舞台にしているので違和感はなかった。幕が開くと右手の布団にドン・ジョバンニとドンナ・アンナがすでに同衾・・・。(^^;)レポレッロのレガッツオも軽妙な演技とバスバリトンの声が上手く響きあって、今までのレポレッロ体験のなかでは一番!彼がこの公演のお目当てだったので拍手にも熱が入った。チョーフィは一時期気になった悲壮感オーヴァー気味の表情が抑えられ、上出来とはいえないけど満足。メリも気取った歌い方と嫌われているが、この役にはその鼻につくとこがオッタービオに合っていたし、声は良くでていたので◎。感心したのはツェリーナのanna Bonitatibus、したたかさと純情さが入り混じった村娘の役を熱を帯びた歌唱と演技でこなし、ブラーヴァ!!ホテルの部屋の洋服ダンスが地獄になって燃えたり、そこに落とされたはずのドン・ジョヴァン二が最後に生き返ってでてきたり・・・不死身のドン・ジョヴァン二も面白い。Pidoの指揮はスピード感にあふれ、ひき締まリ、現代に生きるモーツァルト素晴らしさを堪能。オケはConcerto Koln、コンサートマスターは黒崎氏・・・レザール・フロリサンから移られたのでしょうか?パリ独特のシャンシャン手拍子で盛り上がるカーテンコール。東京のバカ高い引越し公演なんぞもう行かない!やっぱりパリだわぁ~!!

写真はシャンゼリゼ劇場のHPより

 

 


2006初夏の旅〜パリ(2) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/20    プティ・パレ美術館&オペラ「愛の妙薬」

昨夜の蒸し暑さから一転して肌寒くどんよりとした曇り空の日。今日は数年来改修工事のため閉鎖していたプティ・パレが訪問可能になったということで早速行ってみた。リノベーション前も未訪問だったので、今回が初めて。プティというから小規模と思っていたらとんでもない。中庭も美しく堂々としたパレスです。

主なコレクションのなかで貸し出し中だったのはアングルの「レオナルド・ダ・ヴィンチの死」、最近訪れたN.Yのフリックコレクションにも展示されていないものがあったので、どこかで大規模なアングル展があったのかも知れません。フランス絵画ではクールベの名品が数枚。印象派の部屋ではヨンキントの「オーフェルスキエの月光」がとても良い。初期のフランス印象派に与えた影響が大きかったであろうとしばらく眺めていた。同じ部屋のモネの「日没・冬のラヴァクール周辺のセーヌ」にはちょっとびっくり!。「印象-日の出」があまりにも有名なのに日没があるとは知らなかったので・・・。ここでの一番のお目当てはルドン。パステル画のため暗い廊下のようなコーナーに6点展示されていた。「見っけた〜!!」と思わずニコニコ。↓右が「青い壷のアネモネ」反対側に「ヴィーナスの誕生」もある。

中庭には薄いピンクのラベンダーが花盛り。素敵なカフェもある。

オペラの日は美術館は一箇所に絞り、なるべく遅くランチをワインつきでしっかりとり、宿に帰って昼寝をするというのが私のパターン。夕食抜きでちょっと辛いけどオペラで居眠りすることはほとんど無い。終演後はお腹が空いては眠れないので、少々のビールと軽い夜食で就寝。今日ももちろんこのパターンで過ごした。パリに来ると必ず立ち寄るマレのブルゴーニュ料理のレストラン。今回のホテルからもごく近い。前菜にここのエスカルゴをいただくと気分はパリ(というよりブルゴーニュ?笑)。さて今夜はバスティーユ・オペラ、地下鉄で2つ目だから15分後には着席しているという近さ。シャトレ座も徒歩10〜15分でOK。

ドニゼッティ「愛の妙薬」7:30開演

指揮:Edward Gardner  演出:Laurent Pelly   Adina:Heidi Grant Murphy  Giannetta:Aleksandra Zamojska  Nemorino:Paul Groves  Belcore:Laurent Naouri  Dulcamara:Ambrogio Maestri

まず指揮者の名前を見て目が点・・・E・Gardnerってエリオット・ガーディナーと思い込んでいたバカな私。さて現れたEdward Gardnerは若くハンサムな方、2000年にロイヤル アカデミーのディプロムを得て・・・。今年はエジンバラやグラインドボーンのフェスティバルにも登場という若手のバリバリ 。 さて舞台は戦後まもなく?の北イタリアの穀倉地帯。収穫の済んだ小麦の干草の束が舞台いっぱいに詰まれ、クレーン車も見える。アデーナの衣装は映画の「苦い米」の農村の若い娘さん風のはちきれそうな肢体を包む木綿のワンピース。喜劇役者のように演技の上手いNaouriと体格も押し出しも立派なMaestriががっちり脇を固めているので、とても楽しい舞台に仕上がっている。主役の二人Heidi Grant Murphy とPaul Groves は歌唱にそれほどの魅力はないのだが、まず無難にこなしたという感じ。Heidi Grant Murphy はそのワンピース姿、動きがなかなかチャーミングだった。ペリーの演出は愛の妙薬=コマーシャルベースに乗った現代の薬(ビジネス)としてのものなので理解しやすく、それに充分煽られて物欲に走っている私たちにはほろ苦さも自嘲もある。この公演のために作られた幕(スクリーン状の)及びプログラムの表紙には漫画で水虫、ダイエット、赤ちゃんの疳の虫、筋肉増強etcに効くよとELISIR DULCAMARAの広告。そのひとつひとつが可笑しくて、ペリーのセンスをうかがわせるものになっている。オケはOrchestre de L’Opera national de Paris ピットに見た顔が・・・ラ・フォル・ジュルネに東京に来ていたファゴット奏者だった。初めての生の「愛の妙薬」だったが充分満足して宿に帰った。午後11時、パリはまだまだ眠らない・・・というほどカフェのテラスも賑やかだ。


2006初夏の旅~パリ(3) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/21  グラン・パレ美術館&オペラ「タウリスのイフィゲ二ア」

昨日と同じようなどんよりとした曇り空、やや風が強い。今日はプティ・パレの向かいに建つグラン・パレへ。企画展専門?のここは初めての訪問。2.3日前にアンリ・ルソー展が終了していて残念だった。この日はItalia Nova展(Une aventure de L’art italien 1900~1950)、意外にも多くの美術ファンが来訪していて熱心に鑑賞していた。20世紀初頭からのイタリア絵画の変遷がグループ毎にまとめられ、説明パネルも(仏英)詳細、キュレーターたちの力が入っている。イタリアを旅すると、ほとんどがルネッサンス~バロックの絵画や彫刻を観ることで時間が費やされるので、パリで現代のイタリア絵画に触れられるという貴重な体験をさせてもらってラッキーだった。展示品はTrenteとRoveretoの近現代美術館、及び個人コレクションから貸し出されたものなのでほとんど初めて目にするものばかり。なかでは未来派のコーナーがやはり興味深かった。Balla,Severini,Boccioniなど。キリコ、モランディ、そして大戦後の衝撃的なフォンタナの「神の終焉」まで。

グラン・パレから久しぶりのシャンゼリゼ大通りを歩き、コンコルド広場から「とらや」へ行き昼食。鮭といくらの丼などセットメニュー、お茶と和菓子で疲れを癒す。帰途夜食用にファラフェル・サンドを調達して、ホテルの近辺を散策。インターネット.カフェを見つけた。日本語も打てるというのだが、変換が上手くいかなくて断念。30分ほどMIXIなど覗いて、ホテルに戻り昼寝。今日のオペラはお待ちかねのミンコウスキ。いそいそとオペラ・ガルニエへ。

 

 GLUCK「Iphigenie en Tauride」 20:00開演

指揮:Marc Minkowski  演出:Kizysztof Warlikowski

Iphigenie:Susan Graham  Oreste:Russell Braun  Pylade:Yann beuron  Thoas:Franck ferrari  Diane:Salome Haller

日本を発つ前の評判は演出に問題ありという向きが多かったようだが、こちらに来てからは賛否両論という空気になっていた。私は一度しか観なかったうえ、過去と現在の複雑に交錯する舞台はやはり難解だった。しかし、振り返ってみると古代ギリシアの悲劇と現代の家族の悲劇(問題)はそれほど乖離しているわけではない。現代版イフゲニが老女になってホームで過ごす時間から遡って、父親との相克、家族への愛憎、故郷への想い・・・ミンコによって紡ぎだされる音楽の極上の響きがなにより雄弁に物語っていた。まるで神話と現代の日常の入り混じった哲学的な小説を読んでいるような・・・。グリュックのオペラは「オルフェとエウリデーチェ」とこれで2度目。オペラを聴き始めてから10年たち、いつのまにかバロックファンになってしまった私には印象深い公演となった。

グラハムのスケールの大きい(体格も大柄!)歌唱が抜きん出て素晴らしい。この日のブロンはやや不調。カーテンコールでは黙役の老女優の優れた演技に大拍手だった。刺激的な場面も多かったのだが、慣れちゃったのか特に驚くことも無かった。パリは特にガルニエは観光客も多いので途中で帰る人たちもいたが、シャンシャン手拍子の喝采を受けて、ブーイングもかすんでしまった。「やった~!!」と心のなかで叫ぶ・・・ミンコも嬉しそうだった。(^^)V


2006初夏の旅~カン(1) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/22のち   パリ.サン・ラザール12:25~カン14:10 Le Dauphin泊

オペラの合間にフランスの田舎にあるロマネスク教会を訪ねるのが私の旅の歓びのひとつ。今回の旅ではノルマンディ地方のカン周辺のいくつかの教会をゾデアック叢書の「NORMANDIE ROMANE 1」を参照にピックアップした。

朝は2泊分の荷造りとホテルに預けるトランクの整理。そしてホテルの隣のクリーニング屋さんにドライクリーニングの必要な衣服など依頼。3日後に受け取れるというので丁度タイミングが良かった。メトロでサン・ラザール駅へ。ここでは色々失敗・・・窓口の手前にカードの暗証番号を入れる機械がついているのだが、蓋で隠されているので気がつかず、フランス語の下(SOUS)を上(SUR)と聴き間違えたりして恥ずかしかった。そのうえホームの出発掲示板をイル・ド・フランスともう一枚だけと思い込んでしまった。そのもう一枚の近辺で待っていたのだが、なかなかシェルブール行きのホームが確定しない。もう一枚の掲示板がホームのずーっと向こうで見えなかったのが誤算。気がついたのが5分前、コンコースの端から端まで急いだのだが・・・無常にも目の前を発車。(涙)結局1時間半も堅いベンチに座って本を読んだり、ipodを聴いたりして過ごした。

列車が走りだして1時間もすると、緑豊かな野にノルマンディの典型的な木組みの農家が見えてくる。アルザスの木組みの家より素朴で力強い感じがする。眺めていると、パリを離れて田舎に来たという喜びがふつふつ沸いてきた。カンに降り立ってタクシーを待つ列に並ぶが一向にタクシーは現れない。諦めて目の前のトラムに乗り、教えてもらったとおりに3つ目の停留所で降車。しかしホテル近くの城はまだずーっと遠く。あらっ!また聞き間違えたみたい。情けないなとつぶやきながら徒歩で15分くらいのホテルに辿り着いた。一休みした後、徒歩10分ほどの男子修道院へ。途中古本屋でゾデアック叢書がショーウィンドウの片隅に10冊ほど積んであるのを発見。(帰途1冊購入)

修道院の建物は現在公共の事務所のようになっていて回廊から教会(SAINT-ETIENNE)には直接入れない。

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 いったん外に出てぐるっと回って正面から見学。

SAINT-ETIENNE教会から5分ほど路地を歩いてSAINT-NICOLAS教会へ。

↑内部見学はできなかったがSAINT-ETIENNE教会と同様にロマネスク様式の塔の上にゴシック期に加えられた塔が凝ったデザインになっている。扉口の彫刻など撮影。

夕陽が照りつける街をお茶したり、さくらんぼや木いちごなど買って宿に戻った。夕食は疲れたのでホテルのレストランへ。あまり期待しないで席に着いたのだが、近くのひとたちの食べているものを見ると結構いけそ~・・・と30€のムニュを注文。今回の旅で一番美味な食事だった。アミューズ2皿!蟹の前菜、牛肉の主菜、チーズとデザートはワゴンサービス。食前酒のシャンパン、グラスワイン、コーヒーと〆て50€はパリの半額くらいかも・・・満腹、満足。一人旅でも帰り道の心配も無く、美味しいものがいただけるのはこういうお宿。B.W系は家族経営で良いレストラン併設のところが多い(特にフランス)のでおススメ。

←カン市内の古い木組みの家。今はMusee de La Poste(郵便博物館)→ケーキ屋さんのショーウィンドー、どこからみても和菓子!

 

 


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2006初夏の旅~カン(2) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/23   カン~バイユー~カン

朝10時にフロントでタクシーを呼んでもらい、バイユーまでの途中に訪れる4つの教会の説明もしてもらい、OKとのことほっ!。ところが迎えに来たタクシーに乗り込むと「何処へ行きますか?」だってぇ~。またもや地図を出して説明。運転手さんは初めはこの教会、次はここと順番を言ってくれて安心したのだが・・・。最初のTHAON(タンと発音するらしい)で迷いに迷ってしまった。雨の日だったら完璧ぬかるみにはまっただろう。小川の淵の車がようやく一台走れるかというような農道を行ったりきたりしてようやく発見!!

Zodiaqueの「Normandie Romane1」の表紙を飾っていて、その見事なほどの鄙びたロケーション、たたずまいに惹かれていたので、辿り着いた時はホントに嬉しかった。ここはバスは入らないし、事前に役場に訪ねても今は見学不可と断られただろう。というのは内部は床を2~3メートル堀り下げ調査中だったから。側面の入り口を入ると3人の若い男女が地下墓の発掘をしていた。手元には骸骨がゴロゴロ・・・。心の中では「ひえ~っ!祟られないかなぁ」などど怯えながらも(実は小心者なの)、明るく「ボン・ジュール!」(汗)

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参考見取り図によると11世紀の創設で最近壁は補修されたようだ。変形の失われた側廊があった関係か外壁の彫刻のまわりには穴が開いている。

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しかし、なんともいえない古色蒼然とした風情、教会の傍らに打ち捨てられたように石棺が2.3個。THAONの街からも離れた森のなかに残された教会は謎めいた雰囲気もあり、今までのロマネスク巡りのなかでは最も特異な印象を受けるものとなった。↓教会の東側の道路から。正面入り口は反対側になっている。

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↓西側入り口は道路の反対側で、写真は逆光 

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 ↑THAONの内部と南側面。

↓内部の写真は珍しいようなので追加

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後ろ髪を引かれる思いでこの教会を後にSECQUEVILLE-EN-BESSINへ。広い敷地の墓地に建つ教会は門が閉められ見学できなかった。

↓11世紀の塔に付け加えられた13世紀のトップはカンの教会と同じデザイン。

次に訪れたRUCQEVILLEは内部の柱頭彫刻で有名。

↓ 正面と北側面

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 閉まっていたらどうしようと恐る恐る門の柵に手をかけると開いたのでほっ!小さな教会の中には誰もいない。 

↓内部

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写真を何枚か撮ったのだが暗かったのでピンボケ。

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 ポツンと置いてあった寄進の箱にコインをいれて感謝の印とした。

 4つ目の教会はSAINT-GABRIEL、ここも門に鍵がかかっていた。隣接する農家の庭に奥さんがいたので尋ねたのだが、鍵はここにはないというので諦めた。帰国後チェックしたらここは同名地のサン・ガブリエルでもサン・トーマス教会だった。一部外壁にもロマネスクが残っているようだが、近づけなくて、残念。

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がっかりしている私に運転手さんが少し離れたところに古くて綺麗な建物があるというので、そこへ行ってみた。花で飾られた敷地に古い塔や建物数棟。近所の子供たちも犬と遊んでいた。Ancien Prieure de St-Gabriel・・・小修道院?。ここの資料は持って行かなかったので帰国後ガイドブックでチェックしたところ、11世紀の創設。塔は15世紀のもの、JUSTICE TOWERと呼ばれている。それで地下には牢獄もあるそうだが、現在はは園芸スクールとして活用。敷地のあちこちに人間と同じ大きさの農夫や修道士の人形が置かれてるのが珍しかった。古くは小修道院だったということは教会があるはずなのに、それらしい建物もなく(現在は修復され公開)、夏の花の咲く庭園を眺めて休憩。

↓入り口の門

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 ↓構内

ここからバイユーまで20分ほどで到着。マチルド王妃の館で降ろしてもらい、タクシーとはここでお別れ。THAONでも一生懸命探してくれたので、難しい仕事だったねとチップをはずんだ。

早速ウイリアム征服王のタペスリーの見学。説明版を読むのに時間がかリ、疲れて途中でギブアップ。でも本物の展示室には日本語ガイドのイヤフォンがあり、「さっきの苦労はなんなの~」(^^;)念願の絵巻物絨毯(というより刺繍絵巻物?)が観られて幸せ。これの説明は長くなるので割愛。

↓マチルド王妃の館の入り口と建物

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 ノートルダム大聖堂のそばでランチ。ハムやチーズの入ったガレットとオレンジとレモンソースのクレープはノルマンディの名物。とても美味しかった。この街はカンより観光客が多い。イギリスから近いし、タペスリーにも表現された歴史的事実?もあり、そちら方面からも気軽に訪れる人たちで賑わっていた。だから英語もフランスの田舎にしては通じる。↓レストランと大聖堂のクリプトの柱頭彫刻

↓ 大聖堂正面の広場からは全体が写せない。巨大なゴシック教会

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↓クリプトはロマネスクだが柱上部はフレスコ彩色に目が点

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鉄道駅まで20分くらい歩いた。この日は30度くらいまで気温が上がり汗だく。しかし美しい建物を眺めながらなので気分はルンルン。シャンブル・ドットと呼ばれるお花でいっぱいの素敵な館のB&B、水車の回る小川の畔のレストランなど・・・。↓シャンブル・ドット(看板にはシングルで40€弱)やレストラン

 丁度良い列車があり、帰途は20分ほどでカンに到着。疲れたのでタクシーで女子修道院へ。付属のLA TRINITE教会はあいにく葬式の最中だったので、遠慮しながら内部の見学。

↓LA TRINITE教会 

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徒歩で数百メートルのホテルへ戻った。遅かったランチと疲れでお腹が空かないので夕食はパス。手持ちのおせんべい、果物を食べて早めに就寝。


2006初夏の旅~パリ(4) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

 6/24のち   カン11:57~パリ13:30   カン美術館&オペラ「ファウストの劫罰」

土曜日だけのカン→パリ間のノンストップ特急に乗って帰る予定なので、それまではお城のなかの美術館へ。街のあちこちにイタリア・ヴェネツィア派絵画の展覧会のポスターがあリ、それを観ることにした。ホテルから徒歩で数分でシャトウの入り口。ノルマンディ公ウイリアム(征服王)により12世紀初めに建設が始まり、息子ヘンリーによって完成。居城はすでにないが、お城の敷地のなかは近代的な建物の美術館があり、ノルマンディ博物館の一部として使われている古い小さな教会も↓ひっそりと建っている。

ここの所蔵品のなかにイタリア・フェラーラ派のトゥーラ(Cosimo Tura1430~1495)があることを知らなかったので、常設展示室の「聖ヤコブ」を見て驚いた。そして写真撮影OKかどうかの確認もしないで、夢中になってパチリ・・・しかし、係員にノーフラッシュでもカメラはダメと注意された。(汗)

特別展のなかではブザンソン美術館からのG・ベッリーニの「ノアの泥酔」が見られたのがラッキー。旧約聖書の「創世記」にでてくるエピソードを図像化したものとして以前講座で勉強したことも思い出した。ティツィアーノやベロネーゼ、バッサーノなど、フランス国内から借りた作品が多くほとんどはじめて見たものばかり。幸運だった。ホテル↓に戻りチェックアウト。駅で調達したサンドイッチで車中ランチ・・・パリに戻った。

ベルリオーズ「ファウストの劫罰」 オペラ・バスチーユ 7:30開演

Direction musicale Patrick Davin
Mise en scène Robert Lepage
Décors Carl Fillion
Costumes Karin Erskine
Lumières Maryse Gautier
Chorégraphie Johanne Madore et Alain Gauthier
Chef des Choeurs Peter Burian

Marguerite Michelle de Young
Faust Giuseppe Sabbatini
Méphistophélès José Van Dam
Brander Christophe Fel

Orchestre et Choeurs de l’Opéra national de Paris


映像技術を駆使した非常に凝った舞台ではあるが、説明的過ぎ、うるさく感じられた。ベルリオーズの傑作をパリで見たいという願望はようやくかなえられたのだが・・・期待も大きかったせいもあって、ちょっと肩透かし。マルガリーテのMichelle de Youngも印象が薄く、 Giuseppe Sabbatiniも旬はすでに終わってしまったという歌唱・・・高音が濁って聴こえたし、演技も×。(涙)José Van Damだけがかろうじて引き締まった魅力的な低音を聞かせてくれてブラボー!お歳の割り?に舞台上での動きも軽快なのが素晴らしい。

今回の旅のオペラのなかでは一番満足度の低い公演だった。好きな作品、しかも生の舞台は初めてだったので残念。



 


2006初夏の旅~パリ(5) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/25     ルーヴル美術館

昨夜からかなり強い雨が降り、今日のヴァンドームから訪問予定だったロアール渓谷のロマネスク教会を断念。前回2003年のときは電車の乗り間違いで行かれなかったし・・・これで計画は2回目だから、強行しようと思ったのだが、ヴァンドームからの帰りの電車は夜しかないし、雨のなか田舎道を歩くのは辛いということでパス。さてそれではルーヴルで一日過ごそうと行ってみると、ピラミッドの入り口は通常にも増して凄い行列!!考えることは皆同じ。

そのうち雨も小降りになり、やはり無理してもロアールへ行けば良かったと嘆きながらも、なんとか30分ほどで入館。特別展はルーヴルに所蔵されているアメリカ絵画展。フランス印象派のコピー風のものが多く、あまり良い作品がない。ホッパーが一点。パリ修業時代の作品らしいが印象は薄く、すでに忘却の彼方。(汗)

今日はいままで縁がなかった(いつもクローズだった)北ヨーロッパの彫刻を中心に見学。ここのエリアはまずドナテッロ・ギャラリーと呼ばれる部屋から始まり、ドイツルネッサンス彫刻で終わる大変見所の多いところ。マルケ派「死せるキリストと天使」はC・クリヴェッリやG・ベッリーニにしばしば見られる図像。メモするのを忘れたので彫刻家の名は不明。(ご存知の方教えてください)この部屋にはドナッテッロのよく知られている浮き彫りの「聖母子」や洗練されたシエナ派の彫刻など。

昨年ミュンヘンの州立博物館で魅せられたリーメンシュナイダー の「受胎告知のマリア」

私の下手な写真より、実物はとっても綺麗。ルーヴルへ行ったらぜひ会いに行ってください!!気品に満ちた初々しい聖母。改めてリーメンシュナイダーの力量に感嘆!脱帽!・・・ドイツの「リーメンシュナイダーを追いかける旅」をしたいと思った。

ルーブルの北ヨーロッパの彫刻部門で一番の人気を誇るのは「マグダラのマリア」。G・エルハルトの傑作。

説明板によると天上の音楽を聞くために昇天する悔悟する罪の女を思い起こさせるために、教会(アウグスブルグ?)の天井に周囲を天使たちに囲まれ吊り下げられていたそう・・・白く輝く肢体は祈りの場にはあまりそぐわない気もする。(汗)

それで思い出したのは昨年ミュンヘンで見たリーメンシュナイダーの天使に囲まれた「マグダラのマリア」参考↓気配りの彫刻家は美しいボディを毛髪で隠し、ついでに?天使たちにも鱗模様のカヴァリング。

ミュンヘン州立博物館蔵

ここで珍しかったのは聖アンナ像↓聖母マリアと幼児イエスを腕に抱いた頼もしいおばちゃん・・・あらっ!私みたい(爆)

この三位一体型の聖アンナ像は中世末期のドイツで流行ったらしい。どことなくユーモアが漂うドイツの木彫り彫刻を楽しんだ後はフランスの中世彫刻セクションも見学。サンリスの「黙示録の女」がお気に入り。ここまでで3時間ほど歩きくたくた。ランチは館内のレストランで。おススメのランチムニュはチマチマと4種類ほど盛り付けられた前菜と主菜、コーヒーとデザートはセルフサービスで食べ放題という日本でよく見られるスタイル。ここは以前にも来た事があるが、高級レストランのイメージだったが、すっかり庶民的になった。しかし味は値段の割りにいまいち。

オペラのある日は美術館も疲れないようにセーブしながら歩くのだが、今日は目いっぱい頑張り、ひさしぶりの充実感を味わった。夕食は軽くホテルの近所のすし屋で。ひどい味。(涙)北海道に住んでいるとお寿司だけは舌が肥えている。まあまあの寿司屋がサン・ジェルマンにあるのだが疲れていたので手じかで済ませ、大失敗。宿に帰り大好物のさくらんぼと木いちごでお口直し。


2006初夏の旅~パリ(6) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/26のち    パッサージュ巡り&オペラ「フィデリオ」

パリに初めて来たのは1992年の春・・・エジプトのツアーの行き帰りに立ち寄って、美術館巡りを楽しんだ。それから数えてみれば10回目になるパリ。昨日のルーヴルの疲れも残ったので、初めてのんびり街歩きをする気持ちになった。街歩きといえば古いパリの面影が残るというパッサージュ巡り。朝ごはんの後、ベットのうえにマップを広げて検討の結果、まず地下鉄でPassage jouffroy(パッサージュ・ジュフロワ)へ。初めて降りたGrands Boulevards駅周辺はカフェや小さなショップが軒を連ね、多彩な人種が行き来する庶民的な界隈。見落としそうななパッサージュの入り口の右はメルキュールのホテル。インテリアや子供服の店などを覗きながら歩いていくと、突き当たりに小さなパリの旅籠といった感じのホテル。覗いてみると、狭いロビーの横に階段。当然エレベーターは無いようだ。そのレトロな雰囲気は古い白黒映画にぴったり・・・と思いながら左に折れると、あらっ!映画関係のかなり大きな店があり、書籍、パンフレット、古いブロマイドなど飾ってある。

いったんここを抜けるともうひとつのパッサージュ・ヴェルドーの入り口がある。膨大な古本の山が崩れそうな書店をいくつか覗き、ゾディアック叢書を探すがどこもノン。出口から外へ出るとあらっ!ここは何処?先程のオスマン大通りではない。次の目的のパッサージュ・デ・パノラマを探しながら、ついでにアジア料理の店でランチ。ここは日本のお弁当ランチもある。安いので近くのビジネスマンが多い。私は中華点心とベトナムフォーを食べ、暑くなってきたのでも、ぐいっ。

パッサージュ・デ・パノラマはオスマン大通りを越えてすぐのところ。ここも不思議な雰囲気。古銭や古切手を扱うお店が多い。レストランも多く、どこも席が埋まっていた。ここを通り抜け証券取引所の脇から斜めの道を歩いてパッサージュ・ショワズールへ。ここは日本人が経営してるインターネットカフェがあるというので寄ってみた。受付の日本人の老婦人が親切。MIXIの日記を書いたり、ルーアンの情報を見たり、一時間くらい遊んで帰途に着いた。

ベートーヴェン「フィデリオ」(コンサート形式)19:30開演  シャトレ座

 Direction Musicale : Myung Whun Chung

Leonore:Karita Mattila  Florestan:Ben Heppner  Rocco:Matti Salminen  Don Pizarro:Juha Uusitalo  Marzelline:Henriette Bond-Hansen  Don Fernando:Francois Lis Jaquino:Pavol Breslik

Orchestre Philharmonique de RadioFrance

 春にMETで観た「フィデリオ」と同じヘップナーとマッテラのコンビ。あの時はレオノーレ第3番が演奏されなかったが、今回はMyung Whun Chungが情感あふれる音楽をきかせてくれて大満足だった。ヘップナーとマッテラもN.Yのときより数段良く、サルミネンは相変わらず素晴らしい深い声。北欧出身らしい若いバスのJuha Uusitaloにも注目、サルミネンの後継者になれるだろうか?今後が期待される。残念だったのは当初予定されていたバーバラ・ボニーの変わりに歌ったマルツェリーネのHenriette Bond-Hansen とヤキーノのPavol Breslikが力不足、明らかなレベルの差があり残念。ベートーヴェンのこのオペラは壮麗な曲だが、イタリアオペラやモーツアルトに較べて声楽的でないのが取っ付きにくい気がした。それが、聴くたびにレオノーレにこめたベートーヴェンの「理想の女」としての希求が感じられて、とても感動を覚えるようになった。マッテラの気品のある豊かな歌唱はすみずみまで気力にあふれていた。黒いパンツスーツに大柄な、しかしシェプアップされたボディを包み素敵!コンサート形式であったが、シャトレ座の観客も熱いカーテンコール。

 


2006初夏の旅~パリ(7) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/27のち  マレ~サンジェルマン・デ・プレ散策&オペラ「ディドとエネアス」

明日はアムステルダムまで列車移動になるので、重くなった荷物を減らすため数冊の本を抱え近くの郵便局へ。書籍の郵送料は安いのがあるはずなのだが、ボックスMサイズを勧められ・・・痛い出費。でもガラスの腰を持つ私には重い荷物での移動には細心の注意が必要。タクシー代、バスタブつきの部屋代とともに必要経費だからと自ら慰める。

マレからサン・ルイ島に行く途中にヨーロッパ写真美術館がある。寄ってみたのだが、あいにく休日だった。モダンな建物に石庭がしつらえられている。ポン・サン・ルイを渡り島の目抜き通りへ。↓は4年前友人たちと泊まったホテルの近くの花屋さん

ここからシテ島への橋を渡ると、目の前にノートルダム大聖堂の壮麗な後背部が見える。お気に入りの南側から正面へ回る。しかし4年前、南側の壁には痛んではいたが12世紀の浮き彫りも残されていたのだが、すでに削って博物館に入れてしまったのだろうか?綺麗に修復されていた。つまらないな・・・。↓南扉口タンパンの幼児虐殺(左)からエジプトへの逃避(右)子供の命乞いをする母親の表情に胸をつかれる。

大聖堂の前は見学者の長い行列。この辺はセーヌを行き交う観光船も含め、夏の観光客であふれていた。橋を渡ると左岸、あまり整備されていない公園があり、なかを進むとサン・ジュリアン・ル・ポーヴル教会の後陣が木立の向こうに見えてきた。この教会後ろ近くのベンチにアヤシゲな人たちがたむろしているので要注意!正面に回り内部へ。意外なことに現在はギリシア正教の教会として使われているようだ。内陣との境にイコン衝立が置かれている。女面鳥の柱頭彫刻、青銅?レリーフの3つの神の手が珍しい。この近辺もパリの古く狭い路地が緩いカーブを描き、中世の巡礼の歩くさまを想像させる。

サンジェルマン・デ・プレ方面へ裏通りを歩いて行く。パリでは書籍以外の買い物をしなくなってから久しいので、今日はマカロンで有名なラデュレというケーキ屋さんでショッピング。少々高かったがしっかりした箱入りのマカロンを買って正解。手持ちの荷物にして帰国したのだが全然崩れていなかった。

ショッピングはこれでお終い。メトロでマドレーヌ広場へ行きランチ。パリでの行き着けのエディアールのレストランは今回パスし、隣のメゾン・ド・ラ・トリュフへ。白アスパラは美味だったがサーヴィスは良くないし、高い!宿に戻って昼寝。

H・Purcell 「Dido and Aneneas」(コンサート形式)20:00開演 シャトレ座

「ディドとエアネス」は1時間という短いオペラなので2部構成のこの舞台の後半に演奏された。前半のフランス歌曲、後半の英語のオペラとジェシー・ノーマンのスーパーな歌声をミンコの棒で聴くことができたのが、稀有の歓びだった。パーセルのオペラは2年前のザルツブルグでの「アーサー王」に続いて2回目。今回のほうがセリフが少なく、なじみ易かった。カルタゴの女王のエアネスとの恋、別離、そして死・・・その最後のアリアはまさに絶唱。ノーマンの歌手としてのキャリア(脚も悪くなって、歩くのも不自由なことを考えると・・・)はこれからはそう長いとは思われません。残念ですが・・・。「Remenber me ~ 」 ディドとノーマンがオーヴァーラップしてしまった。プログラムを紛失してしまったので、キャストの詳細が不明だが、魔女たちや侍女のべリンダほかも大健闘。カーテンコールはスタンディング・オーヴァーの大喝采!!昨日、今日とコンサート形式ながら素晴らしい!!パリまで来て良かったとつくづく思った。幸せな夜だった。

劇場をでてすぐ近くのカフェから大歓声が・・・この夜、フランスがワールド・カップの準々決勝に進出を決めた喜びの声だった。ジダン、ジダンの大合唱に通り過ぎる車のクランクションの音。優勝したらどうなるのかと心配になるほどのサッカー狂騒曲のなかホテルへ戻った。


2006初夏の旅~アムステルダム(3) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/28   パリ12:55~アムステルダム17:06   オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」         AMERICAN HOTEL 2泊

最近のパリは午前10時くらいまではタクシーも呼べないほど交通が混雑する。その時間を避けるため、チェックアウトタイムの正午まで部屋にとどまり、トランクの整理と列車のなかで食べるお握りを作ったりして、のんびり過ごした。↓名残惜しくパリのプティホテルのロビーをパチリ

今日のタリスは切符を買っていなかったので、早めにタクシーを頼んだのだが、避けていたはずの交通渋滞にまきこまれ、ぎりぎりに窓口に並びヒヤヒヤ。一等席は満席で二等席も残りわずかだったので、後10分遅れていたら乗れなかった模様。ホームを一番向こう端の客車まで歩くと、大きなリックに国旗を立てたサッカー・サポーターの若者たちで混雑していた。応援ついでにヨーロッパ放浪の旅をしているのだろう。夏の暑さのなか輝く若さがまぶしく目に映った。

今夜のオペラの予習CDを聴いたりして過ごしているうちに、今回の旅の出発地アムスに再び舞戻った。ホテルは先日宿泊したところとは別の1994年に初めて一人旅で泊まったライツェ広場に面したホテル。改装されて綺麗になっている。バルコニーのついた運河側の広い部屋。アメリカンホテルのテラス・カフェ

アールヌーボースタイルで有名なレストラン(朝ごはんはここで)

一休みの後、ネーデルランド・オペラの本拠MUZIEKTHEATERへ。この街は自転車専用の道路がある。慣れないと自転車マークに気がつかない。初めての劇場をぼーっと眺めながら歩いていて、凄いスピードの自転車に衝突しそうになって、叱られた。自転車の人が一番威張っているが、このシステムのおかげで自動車が少ないのが有難い。

D・SJOSTAKOVITSJ「Lady Macbeth van Mtsensk」MUZIEKTHEATER 17:30開演

指揮:Meriss Jansons 演出:Martin Kusej オーケストラ:アムステルダム・コンセルトへボウ   Katerina:Eva-Maria Westbroek  Boris Izmajlov:Vladimir Vaneev Zinovi Borisovitsj:Ludvit Ludha    Sergej:Christopher Ventris   Aksinja:Carole Wilson   Sjofele:Alexandre Kravets   Sonjetka:Lani Poulson

ミュージックシアターはホテルからタクシーで10分くらい、市庁舎に隣接し、すぐ近くにはレンブラントの家がある現代建築の劇場。2階ロビーからはマヘレのはね橋が眺められる。座席もゆったりした配置で、前の席との高低差があり、とても観易い。今日のオペラはロビーでお話した現地の方の情報によると、大変な評判を呼んでいるとのこと。新聞にはショスタコーヴィチ指揮者ヤンソンスを神に頼んで遣わせたのでは?といわれるほどらしい。TVカメラも入っていたのでDVDになるかも知れない。プログラムの配役に一部変更がありA・Kotsjergaに替わってカテリーナの舅役をV・Vaneevが歌った。 ヤンソンスがオペラを振るというので、とても興味をひかれたのが理由のひとつ。そしてショスタコーヴィッチの生誕100年にあたる今年にこのオペラを聴けるというのも大きな魅力だった。ピットにはロイヤル・コンセルトへボウが入り万全の体制。優れた演出、神がかり的な音楽・・・いままでのオペラ経験で5本指に入ることは間違いなし。舞台で繰り広げられる人間の愛憎ドラマは作曲当時のロシアの体制的な社会風土から現代に置き換えられている。それが無理なく現代社会の生み出す閉塞感を見事に表現し秀逸。歌手陣もヤンソンスの指揮にしっかりついていく大奮闘。カテリーナのEva-Maria Westbroek は妖艶なルックスと演技に加え、凄みさえ感じられる説得力のある歌唱。すっかりこの役を自分の掌中に納めた感じ。来シーズンはロンドンのロイヤルオペラ(↓TB参照)でも同役で歌うようだ。ステージの濡れ場や殺人などのシーンに演奏されるドラマティックな音楽の凄い迫力。そしてカテリーナの悲劇が浮かび上がる陶然となるほど美しい哀しみの音楽・・・「人間は醜いけれど人生は美しい」と言ったのは画家のロートレックだったかしら?その言葉を反芻しながらの帰リ道。昼間はあまり綺麗ではない運河も夜のイルミネーションに川面がキラキラ輝いていた。


2006初夏の旅~アムステルダム(4) [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/29      アムステルダム国立博物館ほか&オペラ「セヴィリアの理髪師」

朝ごはんはアールヌーヴォースタイルの優雅なレストランで。さすがに種類は多く、チーズが美味しいし、オムレツも好きなように焼いてくれる。今日も朝から快晴の暑い一日。先日のアムステルダム滞在では人の行列で諦めた国立博物館にまず行ってみた。ホテルからは徒歩数分。ゴッホ美術館でのレンブラントとカラヴァッジョの二人展は終了したので、こちらも少し空いたかと思ったのだが・・・やはり5、60人は並んでいた。本館は大規模な改修中とあって裏側の一部の棟でレンブラントの「夜警」「ユダヤの花嫁」などを中心に展示されている。フェルメールの「牛乳を注ぐ女」、ホーホの「貯蔵室の母と子」は何度見ても感動。構図に独特の空間があり心落ち着く。収蔵品全体からすると10%にも満たない限られた展示品に物足りない想い・・・クリヴェッリの「マグダラのマリア」は当然今回は見ること叶わず。(涙)4回ここに来て1回しか観られなかった。その1回もすんなりと見られたわけではないので、次はいつになるのか・・・。↓印象に残ったのはレンブラントと同時代の画家の子供の絵。小さな子に大人と同じようなドレスを着せた肖像画が流行っていたらしい。

次はアムステルダム歴史博物館そして隣接するぺギンホフ修道会へ。今住んでいるのは修道女ではなく独身の信心深い女性とのこと。小さな家が長屋のようにならんで、オランダらしい窓辺のオーナメントが洒落ている。玄関前の小さなガーデンも薔薇が満開で綺麗だった。↓はぺギンホフの中庭にある教会

↑ライツェ広場のカフェ。暑いので上半身裸の若い男たち。目の保養?をしながら私もこの近くのカフェでランチ。

G・Rossini「Il barbiere di Siviglia」 7:30開演 Muziektheater

 指揮:Julian reynolds  演出:Dario Fo   オーケストラ:ネーデルランド・カマー管     アルマヴィーヴァ伯爵:A・Siragusa バルトロ:Donato di Stefano  ロジーナ:Silvia Tro Santafe  フィガロ:angelo Vaccia   バジリオ:Giovanni Furlanetto  Berta:Angelina Ruzzafante

2003年のぺーザロで初めてシラクーザを聴いて、そのこれぞイタリア・テノール!という素晴らしい歌唱にノックダウン。帰国後早速買い求めたアリア集がまた素晴らしく、この日を待ち焦がれていた。しかし、期待が大きすぎたようだった。フローレスのアルマヴィーヴァに耳が慣れてしまって、なかなか馴染めない。中低音はホントにふくらみのある魅力的な声なのだが、この日は多分調子が悪かったのだろう、高音がスンズマリ状態で伸びきらない・・・当然ながら終盤の大アリアも歌われなかった。非常に残念だった。ロジーナのトロ・サンタフェは3回目。パリの「アリオダンテ」とボローニャの「ジュリオ・チェーザレ」で溌剌とした歌声を聴いている。今回も頑張っているのだが、ロッシーニに向いていないような、全般に重い。ダリオ・フォーの演出は明るい青い空にゴヤの絵画風なお祭りなどの風景を挿入。スペイン民衆のエネルギーを感じさせ、随所に笑わせる場面も多く、楽しかった。しかし音楽的にはロッシーニから少し離れている。それにレチタチーヴォの伴奏にチェンバロではなくピアノを使っていたのは解せないし、 違和感があった。

これで今回の旅での最後のオペラを終了。淋しいような、無事スケジュールをこなすことができて嬉しいような複雑な気持ち。夜のロマンティックな運河沿いを眺めながらホテルへ帰った。

 


2006初夏の旅~帰国の日 [2006夏1アムス、パリとノルマンディ・ロマネス]

6/30    アムステルダム~ユトレヒト散策   アムステルダム20:15~7/1成田14:30/18:30~札幌20:10

アムステルダム発が夜便なのでたっぷり時間がある。近郊の町であり今回の旅のテーマのひとつレンブラントとカラヴァッジョを結ぶポイントとなったユトレヒト派を見るため電車でユトレヒトへ。実はこの街は2回目の訪問。何年か前、中近東への旅の乗り換えがアムステルダムだったので、そのときも夜便で時間があり訪れていた。しかし、ユトレヒト中央博物館の場所が道に迷ってわからず、諦めた経験があった。今度こそと張り切って中央駅から近郊電車に乗った。今度は迷わないように慎重に駅からなんども確かめながら・・・しかし、分かりにくいし遠い。道行く人に尋ねてもダメなのは前回同様。違う美術館に入ってそこの案内係に訊いてようやく、ここから1km歩くことが解った。この日は旅のなかでも一番暑い日、うだりながらようやく到着。見学者の数より係員が多いという静かな美術館。お目当てのテルブリュッヘンやホントホルストのほかにユトレヒト出身の著名な建築家H・T・シュレーダーのデザインした家具なども展示されている。シュレーダー邸(リートフェルト)は世界遺産にもなっている。さて17世紀初頭に「ユトレヒトのカラヴァジェスキ」と呼ばれていたイタリア修業から戻った明暗を強調する彼らの絵画、そして違う意味でイタリアの影響の大きい画家として魅力的な絵を描いたなど、作品数は少ないが興味深く鑑賞。

 

ユトレヒトはまた世界的な絵本作家ブルーナーの生まれたところ。現在もこの地で制作活動を続けている。オープン間もないという「ディック・ブルーナー・ハウス」が博物館の向かいに建っているので寄ってみた。大きなゴールド・ミッフィー像に迎えられ入館。世界中の言葉に翻訳された絵本が壁いっぱいに張られている。そのなかに幼い娘たちの最初に触れる絵本として選んだ「サーカス」が・・・懐かしくてほろり。

ミッフイー・グッズショップでは孫娘のためにぬいぐるみを買い求めた。

帰り道は静かな家々の並ぶ通りをゆっくり歩いてユトレヒトの駅へ。↓古い民家の窓の飾り

アムステルダムのホテルに預けた荷物を受け取りスキポール空港へ。ゲート途中に椅子でのマッサージ屋さんを発見。もみもみしてもらって、コーナー横のリクライニングチェアで一休み。今回は細心の注意を払ったおかげで膝も腰も大丈夫だった。去年のサルデーニャのような旅は無理になったけれど、これからは年齢に応じたゆっくりした旅を心がけようと思う。(終)


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