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追加記事 [2008春アメリカ東部NYからボストンへの旅]

ムティエ・サン・ジャンのロマネスク柱頭彫刻 NO.1

2008年春、ニューヨークからアムトラックに乗ってボストンへ行き、フォッグ美術館を訪れました。
旅日のブログ  

 ムティエ修道院はブルゴーニュ地方、Avallonの北東30Kの村Moutiers-Saint-Jeanにあった。この地方最古のベネディクト派の修道院は5世紀に遡る歴史がある。クリニューとは、982年に両院の修道長が同一人だったことから関係が始まり、11世紀にはクリニューの分院のひとつになった。12世紀に最盛期を迎え、新しい教会堂を建設。13世紀後半から始まる荒廃とフランス革命による破壊で、教会堂は採石場として売却され、廃墟となった。遺構は存在しないが、柱頭彫刻はアメリカ、パリ、ディジョンのコレクションに入った。
 
の写真はフォッグの回廊の展示風景。
フォッグ1.jpg

Moutiers-Saint-Jean  112530制作
フォッグ美術館にはムティエと断定できる説話柱頭が3つある。
台形柱頭と呼ばれ、長方形底部をもつ。
大きさは高さ、幅とも6165cm。

1)「ザカリアへのお告げ」 エルサレム神殿の祭司ザカリアは洗礼者ヨハネの父。大天使による子供の誕生の予言を受ける場面。図像は香炉を持ち祭壇の前にいる。

2フォッグ.jpg

↑正面は大天使ガブリエルとザカリア。エリザベトの懐妊を告げる場面。

アーチはビリットと呼ばれる刳形の装飾帯。教会堂の場面設定と考えられる。 

 3フォッグ.jpg

右側面に建物(修道院?)屋根の上で瓦を葺く人、自分の髪を掴む悪魔、下には鐘楼の綱を引く少年の姿。


フォッグ6.jpg

↑ 左側面は老女エリザベートと少年ヨハネと思われる人物が彫られている。
正面と同様のビリット装飾のアーチ

ムティエ・サン・ジャンのロマネスク柱頭彫刻 NO.2

2)エマオへの巡礼 復活の日、エルサレム近くのエマオの村へ向かう2人の弟子は、道ずれになった人がキリストだとは気づかない。この出会いの後は夕食の場面「エマオの晩餐」へと続く。

フォッグ4.jpg 

正面は十字円光をつけたキリストとクレオパスとルカ?二人の弟子。キリストの背後に天使、右上に角笛を持つ若者。

 フォッグ5.jpg

 右側面はエマオの村の3階建ての建物。中世美術には城として描かれることがある。ラテン語訳聖書に、「エマオの城」と訳されたためらしい。アーチや石積なども細かく彫られていて、日常的な説話の場面は現実味がある。

フォッグ7.jpg 

左側面は草地に舞い降りる天使の姿 

下はオータンの「エマオへの巡礼」。ムティエと同じブルゴーニュ地方にあり、ムティエの参考になった彫刻ではあるが、オータンは人物の浮遊感、翻る衣装など、非現実的な表現になっている。

オータン.jpg

 ここの柱頭の写真はすべて撮ったわけではないので、残っていた写真で構成。 

参考資料『ムティエ・サン・ジャンのロマネスク柱頭とクリュニーの西扉口彫刻』ダーリング常田益代/美術史掲載論文   

 レバンツァのサンタ・マリア教会のロマネスク柱頭彫刻

「荘厳のキリスト」中央にキリストと四福音書記者のシンボル

フォッグ8.jpg 

↑正面はうっすらと色彩が残り、存在感抜群の柱頭彫刻。

 フォッグ9.jpg

↑右側面↓左側面に4使徒たちの姿

 10フォッグ.jpg

  「墓を訪れる二人の聖女とエンジェル」 ↓正面

フォッグ10.jpg

 側面(写真無し)は右に3人目の聖女

左に庭師としてのキリストという構成になっている。
 
レバンツァのサンタ・マリア教会の個性的な柱頭彫刻はとても印象に残った。
 
 今まではスペインロマネスクにあまり関心が無く、ほとんど観ていなかったこともあり、ここの柱頭彫刻の素晴らしさに驚き、スペイン・ロマネスクに興味が湧いてきました。そしてこの教会のことも気になりました。

パレンシア地方の何処にあの柱頭彫刻があったのでしょう。地図やGOOGLE EARTHでまずLEBANZAの位置を確認。パレンシア地方の北部にLEBANZAの村を発見。そして村から3キロほど西にLebanza修道院があります。修道院の教会だったと思われるサンタ・マリア教会は現存していません。
この修道院の風景(NETから拝借)
LEBANZA.jpg 
 
ハーヴァード大学美術館(Fogg)の柱頭彫刻の説明パネルによりますと
932年にアルフォンソ公とその妻により創建され、修道院の建物は12世紀に復旧。古い記録では1179年にライムンド司教が修道院を大きい建物に改築、6年後の1185年に完成。そのことが最初の柱頭の上部(冠板)に記されているようです。1180年代の類似様式と図像はカスティリア地方の典型的なものです。彫りは生き生きと深く、面取りされ、厚い葉の文様で飾られた冠板はLebanzaの近くのSanta Maria la Real教会(Aguilar de Campoo)の彫刻デザインに近い特徴を持っています。
Santa Maria la Real教会(Aguilar de Campoo)の柱頭彫刻は現在マドリード国立博物館に収蔵されています。「サムソン」(↓2009.3にマドリード国立博物館を訪れましたが、建物の修復中で、展示されていませんでした)NETから拝借。
参考.jpg
 
重厚さ、活動的な衣文、高い鼻、シャープな額を伴った頭、厚く縁取り、はれぼったい目、そして意思的な頬骨などの共通点が見られます。

 メモ/旧HPにアップしていたファイルがデータ移行中に偶然見つかりましたので、 パソコン買い換えの前にコピーし追加しました。
 
           

 


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