SSブログ

2009年初秋の旅11(サン・クィリコ・ドルチャ~ローマ) [2009秋ローマからロンドンまで欧州周遊]

9/17 (木)

SanQuirico d’Orcia→Abbazia di S.Antimo→Pienza→Montepulciano→Chianciano Terme(Chusi)→Roma          Hotel Ariston 2泊

今日も朝から青空の広がる良い天気でした。昨夜に予約したタクシー(白タクをチャーター)が10時に迎え来ます。それまで朝食は抜き、ベットに横たわっていました。なんとか熱も下がり、下痢も止まったようです。身体に力は入りませんが、車がモンテプルチャーノまでは運んでくれるのです。だから、大丈夫と自分に言い聞かせ、チェックアウト。すでにタクシーの青年がロビーで待っていました。ホテルで紹介してもらったので、料金も教会などの待ち時間も含めて80€と決まっていて、安心でした。

この辺りはオルチャ渓谷と呼ばれ、トスカーナ地方でも風光明媚で知られています。まず、車はトスカーナワインの生産でも有名なモンタルチーノの丘の上の町を通り抜け、山道を越えて走ります。谷間の葡萄畑の彼方にサンタンティモ修道院が見えてきました。

P1010514.JPG

サンタンティモ修道院/S.Antimo

この修道院の起源は古く、8世紀のカロリング時代にまで遡るといいます。9世紀からの資料は残っていて、ベネディクト派の修道院として繁栄しましたが、13世紀には衰退が始まり、15世紀には廃院となりました。1992年から修道士たちが入り、再び活動するようになりました。現在の修道院付属の教会は12世紀の建築で、シトー派の影響の見られるロマネスク様式です。

↓ オニキスが組み込まれた、輝きのあるベージュ色の建物が周辺の緑に溶け込んでいます。車は教会の近くまで入れます。

P1010512.JPG

↓ ファサードの扉口。柱廊の痕跡が見られます。

P1010485.JPG

↓ 内部に入ったところに、その柱廊を飾っていたと思われる獅子が左右に置かれています。

P1010487.JPG

↓ ここで問題が起きました。カメラは禁止の表示が目に入りました。しかし、見物客は数名でしたが、パチパチフラッシュまでたいて撮影中です。私めも恐る恐る・・・。

カメラを構えながら「あ~綺麗!」と思わず感嘆の声がでます。すると側に白い僧服の修道士さんが、いつの間にか立っています。カメラをチラッと見ましたが、やさしく微笑みながら「どこから来ましたか?」。見逃してくださったのです。私の片言イタリア語で、少しお話しました。ほっとしました。

P1010490.JPG

↓ 主祭壇にロマネスクの木製のキリスト磔刑像。内陣は周歩廊になっていて、ここがヴィア・フランチージェナを経由してローマへ向かう巡礼の宿場だったことが伺えます。

P1010491.JPG

↓ 身廊の天井は木造ですが、側廊の天井は石造りの半円蓋。

P1010488.JPG

↓ 柱頭彫刻の中で見逃せないのはカベスタニーの工匠の「獅子の穴のダニエル」、ここだけ異彩を放つ作風です。

P1010494.JPG

↓ 上の「獅子の穴のダニエル」の裏側

P1010489.JPG

P1010500.JPG

P1010493.JPG

↓ 帰る頃は内陣の光が落ち着いてきました。

P1010501.JPG

絵葉書を買っていましたら、日本人のツアーのかたたちが入ってきました。「こんにちは」と挨拶しましたが・・・。

↓ 外壁や持ち送りにも多彩な彫刻が並んでいます。

P1010506.JPG

↓ この彫刻はオニキスが使われています。

P1010509.JPG

↓ オニキスの組み込まれた外壁。

P1010505.JPG

↓ 後陣外観や全景を撮り、

P1010510.JPG

P1010513.JPG

P1010516.JPG

↑ 名残惜みつつ次の目的地ピエンツァへ。

Pienzaへ行く途中は迂回して、Bagno Vignoniに寄るつもりでしたが、この迂回路は山道で時間がかかり過ぎるというので、諦めました。

ここもタルコフスキーの『ノスタルジア』の舞台になり、主人公が狂人とみられるある男との出会いの場所でもありました。その男の演説は終末の予言だったのでしょうか・・・真実と恐怖がないまぜになったような、強く印象に残りました。『ボリス・ゴドゥノフ』にでてくる聖愚者が思い出されます。ロシアには「白痴の言葉は真実だ」という言い伝えがあると聞いたことがあります。タルコフスキーが登場させた人物とはどこかで繋がっているようにも思えました。

↓ 途中で買い求めた絵葉書です。

Bagno Vignoni.jpg

夢中になって観たサンタンティモのおかげで、体調は身体に力が入らず、少々ふらつくものの、なんとかローマまで辿り着けそうです。

元の道に戻り、モンタルチーノからサン・クィリコを経て、ピエンツァの町の丘を下ると、サン・ヴィート教区教会がひっそりと建っています。

↓ コルシニャーノのサン・ヴィート教会/San Vito a Corsignano

現在の姿は11~12世紀の建築ですが、8世紀から9世紀に起源があるといいます。円筒形の切断された鐘塔が控え、黄色っぽい石が温かく、親密な雰囲気をただよわせています。

予定では昨夕来るはずだったのですが、サン・クィリコまでがバスの乗換えなどで大変でしたし、車のルート上の便宜もあり、今日にしたのですが・・・閉まっていました。ここは計画の段階ではノーマークだったのですが、6年前にここを訪れられたBさんのお勧めもあり、寄ってみることにしたのです。

 

P1010518.JPG

↓ ファサード扉口

P1010519.JPG

↓ 浅い浮き彫りも素朴で良い感じです。

P1010520.JPG

P1010521.JPG

↓ 南扉口

P1010522.JPG

P1010524.JPG

↓ ピエンツァからオルチァ渓谷の眺め

P1010530.JPG

モンテプルチャーノのバスターミナルに着いたのは12:30頃、予定通りでした。具合の悪そうな私に、いろいろ気を遣ってくれた親切な青年ともお別れです。

ターミナルには予想はしていましたがコインロッカーなどはありません。煙草屋さんのおじさんに聞いてみたら、隣に鍵のある部屋があるから、預かってくれるというのでお願いしました。しかし、足元見られて5€も要求されましたが・・・。

循環ミニバスがターミナルから出ています。モンテプルチャーノは大きな町で標高が高く、私の今の状態ではとても歩いてはいけません。勾配のある細い坂道にはみやげ物屋やバールなどが軒を並べて賑やかです。この頂上とおぼしきドゥオーモ広場で降り、少し散歩しましたが、坂が多いのでじきにギブアップ。広場で簡単にランチを済ませ、またミニバスでターミナルに戻りました。

↓ モンテプルチャーノからの眺め。

P1010531.JPG

↓ ドゥオーモ広場 

P1010532.JPG

さて、バスターミナルに戻り、荷物を受け取ろうとしましたが、なんと!煙草屋さんが閉まっています。

一瞬パニックに・・・隣のバールのおばさんに聞くと、今は昼休みだから3時には戻るはずといいます。バスは3:20発なので、大丈夫だからと思うものの、待つ間はホントに心配でたまりませんでした。一緒に心配してくれたバスの運転手さんも煙草屋のおじさんが3時5分に戻ってきたので、「良かったね」と言ってくれて、しかもこのかたはChianciano Terme(Chusi)までのバスの運転手さんでした。バスにはFS駅までが終点と書いていないので、この運転手さんが大丈夫駅まで行くよと教えてくれて一安心。

バスの発車時間の少し前に、日本の70歳半ばの男性がやってきました。聞けばChianciano Terme(Chusi)で列車に乗り換え、ローマまで行かれると言います。シエナでバスの乗換えが分からなくて、ここまでタクシーで来られたそうです。シエナからはFSからバスが出るのをご存知なかったのです。(内心、私の勝ちと思いました 笑)

旅は道ずれです。列車もご一緒してローマまで戻りました。65歳までお仕事をして、それからイタリア語を習って、イタリアを旅するようになったそうです。今回も田舎では若者の一人旅のかたは見かけませんでした。じいさんばあさんのほうが元気なようですね。

ローマのホテルに1週間ぶりに舞い戻りました。この期間は部屋代が上がりますので、シングルで予約したのですが、こんなに疲れていてはバスタブが必要です。1泊35€を払ってダブルのバスタブつきに変えてもらいました。部屋でおかゆを食べて、お風呂に入って、泥のように眠りました。

 

 


nice!(0)  コメント(10) 

nice! 0

コメント 10

レイネ

サンタンティモの修道院、去年近くに行ったはずなんですが、全然知らずに見逃してます。建材にオニキスが組み込まれているというのは、石の中にオニキスのかけらが入ってるということですか?オニキスは黒いけど、白い石の中に細かく入ってるので光を反射して、明るい印象になるんでしょうか。
ピエンツァもモンテプルチアーノも、町自体を遠くから眺めても、丘の上の町から四方に広がる風景を眺めても、絶景ですね。ワインも美味しいし。
前日召し上がったトリュフのパスタの写真に、おもわずごっくんと唾を飲み込みました。白のトリュフがいっぱいでゴージャスですね。
主人は、日曜日にアーティショーク入りのラビオリを作ると言っているので、それで我慢します。。。
by レイネ (2009-10-15 06:49) 

Bowles

サン・クィリコ・ドルチャから私たちは当〜然バーニョ・ヴィニョーニに行き、そのあとサンタンティモに行ったので、その「山道」を通りました(笑)。モンタルチーノ経由は帰り道。サン・タンティモは今はフランスのベネディクト会の修道僧さんたちが管理しているのではなかったかな? 私が行ったのは8月ですが、ほんのわずか季節が違うだけで、ずいぶん周囲の自然に変化がありますね。

しかし、まるで『ノスタルジア』の主人公を思い起こさせるような体調で、よくまあ廻られましたね!!モンテプルチャーノの坂道、あれはその体調では、絶対に無理です...。

私たちがこのあたりを廻ったのは、あの最高に暑かった2003年のことです。車の外の温度計が40度を示していました。って、今年もそういうことがありましたが。トゥスカーニァ(やタルクィニアに行ったのが2年前)といいこのあたりといい、『ノスタルジア』とロマネスクが重なっていて、おいしいところです。
by Bowles (2009-10-15 09:28) 

alice

レイネさん

>サンタンティモの修道院、去年近くに行ったはずなんですが、全然知らずに見逃してます。

それはとても残念なことというか・・・勿体無いことでしたね。でもまたの機会があるでしょう。オランダからはそう遠くないですもの。

オニキスは縞模様の大理石なので黒っぽい縞も当然入っていますが、ここでは大理石自体のオフホワイトの明るさが勝っているのを使っているようです。

トスカーナの教会堂はほとんどが装飾の一部にこの地方特産の大理石を使っています。他に比べると華やかさのあるロマネスクのように感じました。
by alice (2009-10-15 14:14) 

alice

Bowlesさん

あの山道を回られたのですね~タクシーなので、自由が利かず本当に残念でした。

サンタンティモ、私の参考書ではプレモントレ派になっています。あのお坊さんに訊けば良かったわ。(笑)

2003年に周られたのでしたね・・・あの記録的な猛暑の時でしたね。後から訂正しておきます。

>『ノスタルジア』とロマネスクが重なっていて、おいしいところです。

それに美味しいワインもね!

by alice (2009-10-15 14:24) 

Bowles

>私の参考書ではプレモントレ派になっています。

失礼しました〜、そのとおりです〜。フランスのプレモントレ(ノルベルティーヌ)会ですね。

>後から訂正しておきます。

いちゃもんつけて、ごめんなさい。


by Bowles (2009-10-16 09:44) 

alice

Bowlesさん

>いちゃもんつけて、ごめんなさい。

全然、いちゃもんとは思っていませんよ~。(笑)

いい加減な性格が災いして、誤字脱字も多いことと思います。何か気づかれましたら、お知らせくださいね。


by alice (2009-10-16 18:03) 

tina

体調が悪いのによく頑張られましたね。
だいぶ前ですが、リスボンからマドリードに移った夜、震えがくるほどの高熱を出して、お腹もこわし、大変な思いをしたことを思い出しました。
リスボンで食べたイワシの塩焼きについていた生野菜がいけなかったのかどうか。夜中に何度もトイレに通ったところ、壊れてしまい、水が止まらなくなって大慌て。夫と二人でしたので、なんとか夜中にサービスの人を呼んで直してもらいましたが、一人だったらと思うとぞっとします。(尾籠な話をお聞かせしてすみません)

レイネさんのおっしゃるように、オニキスという貴石の一種でアクセサリーにする黒い石を考えてしまいますが、大理石の一種なのですね。
知りませんでした。
by tina (2009-10-16 20:35) 

alice

tinaさん

私も大理石はマーブルと思っていたのですが、

<石材として「大理石」と呼ばれるものには、岩石学上の大理石(結晶質石灰岩)のほか、非変成の石灰岩、トラバーチン(平行な縞状構造を持つ多孔質石灰岩)、鍾乳石、オニキスなどが含まれる。なかでもイタリア・トスカーナ州のカラーラビアンコやギリシャのペンテリコンなどの白大理石が有名である。>

と書かれたものがありますので、間違いはないと思います。

なお、参照させていただいたのはI先生の『イタリア・ロマネスク』とイタリア旅行協会のガイドブックですが、両方にオニキスと記述されています。

一人旅は気楽でも、こういうときはホントに心細くなります。あの夜はもう一人旅止めようかな~と思いましたもの。(元気になったら忘れました 笑)
by alice (2009-10-16 23:34) 

mio

アリーチェさん とうとうサンタンティモに行かれましたね。時々ブログを拝見させていただきながら、「この素晴らしい旅人はいつサンタンティモを訪れるのだろう・・」と密かに愉しみにしていました。私は’97年偶然行ったのですが、当時フィレンツェに数年滞在していて車ですと割りと近かったものですから美しいあの小さな教会に何度となく通いました。当時は駐車場なども無く、訪れる人もまばらでしたから、行くと教会の脇の修道僧の居住エリアに残っている遺跡等の説明もしていただけました。帰国後あなたの素晴らしい旅日記を発見・・・以来多分ロマネスクをとても愛されていらっしゃるであろうあなたに、是非いつかSt'Antimoにたどり着いて欲しいと、あなたのブログの愛読者の一人として願っていました。記事と画像を拝見して、なんだか訳も無くまるで自分のことのように嬉しいです。
by mio (2009-10-27 11:04) 

alice

mioさん

初めまして!フィレンツエにお住まいだったのですね。

トスカーナはイタリアの中でも、美しい風景とワインで特に有名ですが、素晴らしい教会建築も多く、感動の連続でした。

初めてSt'Antimoの存在を知ったのは1991年にシエナを訪れたときでした。美術館のショップでポストカードを買おうとして、ふと横にあるカードに気がつきました。その購入してきた一枚の絵葉書が心に残りました。それがロマネスク様式の教会と知ったのは、しばらくたってからでした。

St'Antimoを実際観るまでに18年・・・一番美味しいものは後にとっておいたみたいです。(笑)

>記事と画像を拝見して、なんだか訳も無くまるで自分のことのように嬉しいです。

ありがとうございます。美の体験を共有する歓びを実感しました。ブログを続けてきて、本当に良かったです。


by alice (2009-10-28 16:40) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。